【11月26日 AFP】サッカー界のレジェンド、ディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)氏が25日、心臓発作のため60歳で死去し、母国アルゼンチンでは「神に最も近い人間」と思われた英雄の死に衝撃が走っている。

 マラドーナ氏の訃報は、経済危機と新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に打ちのめされ、サッカーが万病の薬と考えられているアルゼンチンにさらなる打撃となっている。

 追悼する場を探すファンは、首都ブエノスアイレス中心部にあるランドマークのオベリスクや、マラドーナ氏が頭角を現したボカ・ジュニアーズ(Boca Juniors)の本拠地ラ・ボンボネーラ(La Bombonera Stadium)に向かった。

 ある28歳の男性は「信じられない。耳を疑う。どんな嵐でも乗り越える人もいるという考えもあるが、結局みんな最後は死ぬ。悪夢のようだ。冗談だろう」と話した。

 アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス(Alberto Fernandez)大統領は、3日間の国喪を発表し、テレビ局TyCスポーツ(TyC Sports)のインタビューで「きょうは悪い日だ。アルゼンチンの全国民にとって非常に悲しい一日になった」と語った。

 すでに街中で追悼は始まり、ファンは全盛期のマラドーナ氏と背番号10に敬意を表した横断幕の横にわびしく立った。旗の多くは、スペイン語で神を意味する「dios」とマラドーナ氏の背番号をかけて「D10S」と書かれていた。

 アルゼンチンでサッカーが宗教なのだとしたら、マラドーナ氏はまさにその神で、宗教言語を使って同氏をあがめる「マラドーナ教」の創始者にとっては特にそうだ。

 マラドーナ教は、伝統的にサッカーの祝勝場所に使われるブエノスアイレス中心部のオベリスクまで集うよう、ファンに声をかけている。

 マラドーナ氏の60歳の誕生日を祝い、先月30日に自身のアイドルのタトゥーを体に入れていたギレルモ・ロドリゲス(Guillermo Rodriguez)さん(42)は、「できれば話したくない。きょうはオベリスクに行く」と語り、マラドーナ氏にハグするという夢をかなえることはできなくなってしまったと涙を流した。

 マラドーナ氏はキャリアを通じて薬物に苦しみ、それもあってアルゼンチンの人々は自分たちの英雄を非常にかばった。ソーシャルメディアでは、マラドーナ氏は「さまよう汚れた罪深い神だ。神に最も近い人間」だとする匿名ユーザーの投稿が拡散している。(c)AFP/Liliana SAMUEL