■「色分けと固定観念」

 多様で活気あるタイのLGBTQコミュニティーは、メディアや有名なバンコクの夜の街で目立ち、タイは寛容な国だという評判を高めてきた。

 しかし、現実はバラ色の状況とは程遠く、トランスジェンダーに対する差別がまん延し、職探しの機会さえ逃すこともある。テレビのバラエティー番組や映画では、同性愛者に対する凝り固まった見方があふれている。

「私たちは色分けされ、固定観念で見られている──本当に受け入れられているとはいえない」。抗議デモに合わせて、LGBTQの権利を訴えるパレード「プライド(Pride)」の準備をしながらシラポップさんは言った。「私たちみたいな人々が存在していると認め、彼らの視点から私たちを分類しているにすぎない」

 シラポップさんは緑色に肌を塗りながら、今回のマサラ・ボールドは、米ブロードウェーの大ヒットミュージカル『ウィキッド(Wicked)』の主役、エルファバ(Elphaba)になると語った。『オズの魔法使い(Wizard of Oz)』を魔女の側から再構成した物語だ。

 エルファバを選んだのは当然、政治的な理由からだ──緑色の肌を持つエルファバは疎まれて育ち、強力な魔法使いに歯向かったことで自由の国オズから追放されるとシラポップさんは説明する。それは、強大な力を持つ君主を批判した民主派の活動家らが、保護を求めて欧州に亡命した「タイの状況と同じだ」という。(c)AFP/Dene-Hern CHEN