【11月24日 AFP】新型コロナウイルス対策として米州政府が出した営業停止命令により、米経済が打撃を受けたことは間違いない。だが、その正確なコストはこれまで明らかにされてこなかった。

 仏パリのHEC経営大学院(HEC Paris)と伊ミラノ・ボッコーニ大学(Bocconi University)の研究者らの試算によると、米国で新型ウイルスの流行が始まった3月から5月にかけてのロックダウン(都市封鎖)によって救われた命は2万9000人、一方、コストは計1690億ドル(約17兆6000億円)だった。救われた人命1人当たりのコストは、約600万ドル(約6億2500万円)に上る。

 HEC教授で仏国会議員でもあるジャンノエル・バロ(Jean-Noel Barrot)氏は「州知事らは一方で人命を救ったが、他方では経済活動を低下させた」と述べた。

 米国では新型ウイルスの感染者が累計1220万人を超え、死者数は25万7000人近くに上っている。現在も全土で感染が拡大しており、多くの州では再びロックダウンに踏み切っている。

 3月のロックダウンは州や自治体ごとに導入がばらばらで、世界一の経済大国に前例のない混乱をもたらした。その結果、公衆衛生の名の下で生活様式の変更を強制する行政の役割をめぐり議論が生じた。

 春から夏にかけて、規制は程度の差はあれ緩和された。だが、そうした制限は個人の自由を大きく損なう攻撃に等しいと反発する批判派と、制御不能なウイルスを封じ込める方法の一つだと主張する支持派が対立している。

 世界にはもっと厳格な外出禁止令を命じ、違反者に罰則を設けている国もある。米国の措置はそれほど厳しくはなかったが、経済に対する影響はすぐに表れた。3月28日までの1週間で米失業保険の申請件数は、690万件近くまで急増。2月に3.5%という歴史的低水準を記録した失業率は、4月には14.7%まで跳ね上がった。

 バロ教授はジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)と米国勢調査局のデータに基づき、さまざまなロックダウンには米国内総生産(GDP)の約0.8%のコストを要したが、調査対象期間の新型ウイルスによる死者数を約4分の1減らすことができたと結論付けた。

 バロ氏は今回、新たに一律の規制を導入することは、新型ウイルスによる死を回避する上でそれほど効果が望めない一方で、コストは依然として高いと主張。「生き延びるためにいわゆる集合的な富を燃やし尽くすことのない、緊急時対応策を考える必要がある」と語った。(c)AFP/Chris Stein