【11月17日 AFP】ブラジルで15日、統一地方選の投開票が行われ、トランスジェンダーの候補者が次々と当選した。出生時の名前ではなく自身の選んだ名前での立候補が許された初めての選挙となった今回、当選者らは歴史的な勝利を祝った。

 ブラジルの最大都市サンパウロ(Sao Paulo)で当選を果たしたトランスジェンダーのエリカ・ヒルトン(Erika Hilton)氏はツイッター(Twitter)に「私たちが勝った! 黒人のトランス女性が市議会議員に選ばれた。史上初めてだ」と投稿した。ヒルトン氏は左派の社会主義自由党(PSOL)から出馬した活動家。ヒルトン氏は同じく同市で当選を果たしたトランスジェンダーのタミー・ミランダ(Thammy Miranda)氏とともに、同国の経済の中心サンパウロ市議会55議席のうち、得票数でトップ10に入った。

 今回の統一地方選は極右ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領の2018年の就任以来初めてのものとなった。少数の中小都市を除いて、有権者は主にボルソナロ氏が支持する候補者を退け、主要政党から出馬したより穏健派の候補者を選ぶ傾向にあった。

 ブラジルは文化的に男性優位主義と同性愛嫌悪が強いことで知られる。昨年、同国ではトランスジェンダーの人々124人が殺害された。この数は世界最悪の水準。しかし、選挙管理当局は今年、トランスジェンダーの候補者が出生証明書に記載された名前ではなく、実際に使用している名前で出馬することを初めて許可。トランスジェンダーの人々の権利向上の動きと歓迎されていた。

 リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)ではトランスジェンダーの候補者は当選しなかったが、性的少数者(LGBT)のコミュニティーは同性愛者と黒人の権利向上を目指した活動家、故マリエル・フランコ(Marielle Franco)氏の妻、モニカ・ベニシオ(Monica Benicio)氏の市議会議員当選を歓迎した。市議会議員でもあったフランコ氏は2018年に殺害された。(c)AFP