【11月14日 東方新報】中国で、潮流玩具(デザイナーズトイ)と呼ばれる大人のためにアジアの有名デザイナーがデザインしたキャラクターフィギュアが青少年、若者に大流行している。火付け役は中国のデザイナーズトイメーカー・販売の専門店・ポップマート(Pop Mart)の盲盒(ブラインドボックス)。一個39元(約619円)から99元(約1572円)の10センチ前後の箱状の商品でその名の通り、箱を開けるまで、中身がどんなフィギュアが入っているかわからないので、福袋かくじ引きをあてるような射幸心をあおる。

 香港デザイナーのケニー・ウォン(Kenny Wong)さんがデザインした、モリー(Molly)というキャラクターフィギュアが特に人気だ。一つのキャラクターにつき、さまざまなコスチュームシリーズが発売され、1シリーズ12セット。定番モデルのほか、数個のシークレットデザインと呼ばれるレアデザインが含まれており、レアデザイン欲しさに数十個を「大人買い」してしまうファンも多い。レアデザインフィギュアはネットオークションなどで。1000元(約1万5881円)~5000元(約7万9408円)で転売されたりもする。

 2014年に日本発のミニフィギュア・ソニー・エンゼルの入ったブラインドボックスが最初に売り出されて以降、20代から30代の若者の間で人気が広がり、2019年の11月11日の「双11(お一人さまデー)」商戦では1日で200万個販売するほどになった。だが、一人で500個、およそ3万元(約47万円)を「大人買い」しまったというような「ブラインドボックスマニア」も全国各地にたくさんおり、社会現象として中国メディアでも取り上げられている。

 ある女性のマニア(25歳)によれば、「服を買うよりも楽しい。味の知らないチョコレートの箱を開けるように、次はどんな味だろうとワクワクする」と魅力を語る。広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)のある大学生は、友達とウインドーショッピング中、たまたま初めてブラインドボックスを買ってしまい、以来、「中毒」になった。それまでちょっとうつ病に苦しんでいた彼女は、「初めて夢中になれるものに出会って、ようやく自分の気持ちを発見した」という。SNSなどを通じて同好の士とも出会って、喜びを分かち合うようにもなった、という。

 一方で、「買い始めたら止まらない」、「『入坑(訳:沼にはまる)』のはたやすいが抜け出せない」「ほしいデザインに当たるまで、買い続けてしまう」といった悲鳴も。

 ポップマートは10年前に、北京市中関村(Zhongguancun)の地下道の小さな売店からスタート。今は国内急成長のデザイントイメーカーとなった。2017年、2018年、2019年の間、ポップマートの売り上げはそれぞれ1.58億元(約25億円)、5.15億元(約82億円)、16.83億元(約267億円)と急増。純利益も156万元(約2478万円)、9952万元(約16億円)、4.511億元(約72億円)。モリーの知財関係(IP)売り上げだけで4101万元(約6億5131万円)、2.14億元(約34億円)、4.56億元(約72億円)とお化けヒットの記録を更新中だ。ポップマートがアジアの人気デザイナーと契約して保有しているキャラクターIPは85種類以上。

 ポップマートの人気に追随する形で、52Toys、アクトイズといったデザイナーズトイブランドが続々と登場している。

 この人気の背後には、アニメや漫画で育った世代が、リアルのアイドルやスターと同じように自分の「推し」にお金をつぎ込むことでキャラへの愛を表現し、ファン同士のコミュニティーが形成されることなどがある。また、一部商品についてはアート作品と同様に、独特のオークション市場が形成され、高額転売が可能なので、投資感覚で買う人や、レアものが入った箱を専門に転売する「ダフ屋」もいる。

 だが、ビッグデータ、メディアリサーチコンサルタント企業の艾媒リサーチCEO兼主席アナリストの張毅曾(hang Yizeng)氏は、「ブラインドボックスのフィギュアは、決して複雑な工芸品ではなく、コピーもしやすいため、投資目的にむやみに買うのはいかがなものか」と、「はまりすぎ」への注意を促している。(c)東方新報/AFPBB News