【11月11日 AFP】ミャンマー中部の森で樹上生活をする新種のサルを発見したとする論文が11日、動物学専門誌「ズーロジカル・リサーチ(Zoological Research)」に発表された。

 発見されたのはラングールと呼ばれるサルの一種で、ミャンマー中部にあるポパ山(Mount Popa)にちなみ、「ポパラングール(Popa langur)」(学名:Trachypithecus popa)と命名された。

 ぼさぼさのグレーの毛、目の周りの白い輪が目立つ仮面のような顔と柔軟な体が特徴で、木の上で生活し、葉を主食にしている。

 論文によると、ポパラングールは少なくとも100万年前から生息していたが、野生に現存する個体は200~250匹のみ。そのうち約100匹を擁する最大の個体群が、ポパ山麓に生息しているという。

 ミャンマーの最大都市ヤンゴンにある環境保護団体フローラ・ファウナ・インターナショナル(FFI)の研究員で、今回の論文の責任著者であるフランク・モンバーグ(Frank Momberg)氏によると、ポパラングールは分布域全域において生息地の消失や狩猟の脅威にさらされている。専門家は、ポパラングールを「近絶滅種」に指定するよう勧告するつもりだ。

 新種の発見に至った最初の証拠が発見されたのは自然の中ではなく、英ロンドン自然史博物館(London Natural History Museum)の研究室だった。遺伝子解析の結果、100年以上前に英植民地下のビルマ(ミャンマーの旧国名)で採取されたサンプルが新種発見につながった。

 モンバーグ氏らが森で採取したポパラングールのふんのサンプルが、博物館に保存されていたものと一致したため、それまでは未知だったラングールの一種であるポパラングールが、現在も野生に生息していることが示された。

 2018年にようやくポパラングールの姿が映像で捉えられ、その特徴的な毛の色合いや模様が明らかになった。体重8キロほどで、体毛は灰色がかった茶色で腹が白く、手と手首は手袋のように黒い。そして体よりも長く、1メートル近くある機敏な尻尾を持つ。

 ラングール系のサルは世界に約20種存在し、一部は絶滅の危機にひんしている。中でも有名なのは、古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ(Ramayana)」に登場する神猿にちなんで名付けられたハヌマンラングール(Hanuman langur、別名:グレーラングール)だ。

 今回の研究には、ドイツのゲッティンゲン(Goettingen)にあるドイツ霊長類センター(German Primate Centre)の科学者らも参加した。(c)AFP/Marlowe HOOD