【11月19日 AFP】モルドバ北部のソロカ(Soroca)には、裕福なロマ人がかつて所有していた豪勢な邸宅が立っており、質素な伝統的家屋と見事な対照を成している。

 この地域には、ロシア・モスクワのボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)や米首都ワシントンにある連邦議会議事堂(Capitol Hill)を模した邸宅が立ち並ぶ。これらの邸宅は、欧州で最も貧しいモルドバで、富を誇示するためのものだった。

 しかし、持ち主がより良い未来を求め、人口約2万2000人のソロカを去った今、宮殿のような邸宅の多くが空き家となっている。 

「ロマの男爵」の息子を名乗るアルトゥール・チェラリ(Artur Cerari)さん(41)は、アゼルバイジャンのモスクを模した黄金色のドームと尖塔(せんとう)がそびえる建物の前に立ち、同胞は旧ソビエト連邦の国々に移住したとAFPに語った。「彼らは1999年からロシアへ移動を始め、そこからカザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャンへとさらに移動した」

 通りの向かいには、ギリシャ神殿風の飾り気のない灰色の建物が見える。同じ地区内にまったく同じ邸宅がもう1軒あると話すのは、海岸に座っていた老人サンドゥさんだ。持ち主は2人の娘のために同じ家を2軒建てたが、2人ともモルドバを離れてしまったという。

「右に行けばサンクトペテルブルク(St. Petersburg)のエルミタージュ美術館(Hermitage Museum)の複製が、反対側にはボリショイ劇場もある」と、若い男性アリンさんが話しかけてきた。この地区に30軒ほどある邸宅のうち、現在も使われているのはほんの一握りだという。

 住民たちの話によると、邸宅の一部は、モルドバがソ連の一部だった1980年代に建設が始まった。それよりも新しいものの中には、建設主の資金がなくなったり、街を去ったりして、完成しなかったものもある。

 ルーマニアの建築家ルドルフ・グラフ(Rudolf Graf)氏によると、このような邸宅は「名声と成功」の証しと考えられていて、東欧各地で見ることができる。(c)AFP/Mihaela RODINA