【11月10日 東方新報】世界最大のオンラインショッピングイベントに成長した中国の「双11(独身の日)」セールが今年も始まった。コロナ禍による自粛生活の反動で「リベンジ消費」が見込まれ、日本企業にとっても大きなビジネスチャンスとなっている。

 中国では独り身をイメージする「1」が並ぶ11月11日を「独身の日」(光棍節)と呼び、大学生や若者たちが合コンやパーティーを開いていた。そこに着目したのがネット通販最大手の阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)。中国ではもともと、10月初めの国慶節(建国記念日)の大型連休と12月のクリスマス商戦、年明けの春節(旧正月、Lunar New Year)に挟まれた11月は消費が停滞しやすい時期。アリババは2009年、「自分へのごほうびをネットショッピングで」と独身の日セールを始めた。スマートフォンやインターネットが急激に普及した時期と重なり、モバイル・デジタルの割引製品などに注文が殺到。参加業者が値下げ競争を繰り広げ、「最も商品が安くなるセール」として数年で市民権を得た。最近はネットセールを意味する「双11(ダブルイレブン)」と呼ばれるようになった。

 2019年にアリババの通販サイト「天猫(Tmall)」の取扱総額は2684億元(約4兆2550億円)に達した。近年は中国EC第2位の京東商城(JD.com)やスマホ大手の小米科技(シャオミ、Xiaomi)など他社も参入。全体の流通額は4101億元(約6兆5000億円)に達した。同じ2019年で米国のブラックフライデー(Black Friday)の総売り上げ74億ドル(約7770億円)や、サイバーマンデー(Cyber Monday)の94億ドル(約9900億円)を大きく上回った。

 アリババは今年のセールを11月11日の1日だけでなく、11月1~3日と11日の計4日間に拡大した。セールの盛り上あがりを2回作り、出店企業と宅配業者の出荷ピークを分散する狙いで、コロナ禍の影響を受けている新規出店ブランドや中小企業に商品やブランドをアピールする機会も増やした。アリババは10月20日の発表会で「今年はセールの参加企業数などで世界最大のイベント」と説明。25万以上の企業ブランドが参加し、世界89か国・地域の商品を取り扱っている。10月末から予約を受け付け、越境ECサイト初日の取扱高は前年同期比の9割増となっている。コロナの影響で海外旅行をあきらめた消費者がまとめ買いしているようだ。

 中国ではEC人口とインターネット人口が頭打ちとなっており、「独身の日」セールも例年過去最高を記録しているとはいえ、ここ数年は購入予約期間の拡大やクーポン券のばらまきで数字を積み上げている側面がある。独身の日セールは「需要の先食いにすぎない」ともいわれ、参加企業が値下げ競争で首を絞めている現状も。そんな飽和状態も指摘されているが、今年の独身の日セールはある種の「使命」も担っている。中国では新型コロナが収束し工業生産は回復している一方、消費はまだ横ばい状態が続いている。国を挙げてのセールで売り上げを伸ばし、中国経済の健在ぶりを世界にアピールする役割を担っている。

 独身の日セールの売れ筋は、モバイル・デジタル、家電類、化粧品類、食品類、ベビー・マタニティー類が上位を占める。そして越境ECでは、日本は2019年まで4年連続で1位を獲得している。美顔器メーカーのヤーマン(YAMAN)や花王(Kao)、ムーニー(Moony)、ユニクロ(Uniqlo)、資生堂(Shiseido)などが人気だ。昨年は、岐阜県の中小企業「Artistic&Co.」が中国の「網紅(ネットのインフルエンサー)」とタイアップして40万円の美顔器をPRし、予約販売開始から30秒で600台を完売したことが話題になった。

 米国の調査会社のアンケートによると、独身の日セールで中国の消費者の57%が「米国製品の購入を減らす」と答えている。長引く米中経済摩擦により米国への反発が強い影響だ。同時に66%が「外国ブランドより国内ブランドを購入する」と答えているが、こうしたアンケートでは回答者が「愛国心」をアピールする傾向が強い。「米国製は買いたくないけど、やはり良い製品を買いたい」という消費者が日本製品を選び、日本企業が売り上げを伸ばす可能性がある。11日のメインセール日が終わった後の、売上額やその内容が注目される。(c)東方新報/AFPBB News