【11月8日 東方新報】中国共産党が年に1度開く重要会議、第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が10月29日閉幕し、コミュニケ(声明)が発表された。2021~25年の経済運営目標「第14次5か年計画」では具体的な経済成長の数値が含まれなかった。また、今回は初めて「2035年までの長期目標」という異例の長期方針が示された。そこにはどのような狙いがあるのか。

 共産党は党大会を5年に1度、中央委員会全体会議を年に1度開き、重要な決定をする。特に5中全会は翌年からの経済5か年計画を話し合う重要な会議だ。

 コミュニケでは具体的に目標とする経済成長率への言及はなく、「質と効率の大幅な改善に基づき、持続的かつ健全な経済発展を達成する」と強調している。中国は2016~2020年の第13次5か年計画で年平均成長率を6.5%としたが、新型コロナウイルスという未曽有の試練を受け、その達成は極めて難しい。そうした状況を受け、2021年以降も単純な量的拡大を求めるのではなく、質の高い発展を目指すことを示している。

「質の高い発展」のキーワードは、「テクノロジーの自立」と「2つの循環」だ。中国は人工知能(AI)や第5世代(5G)移動通信網、自動運転などの新技術開発が進んでいるが、その技術の基盤となる半導体は輸入が主流。その半導体は、米国との対立激化で確保が難しくなりつつある。こうした「技術的封鎖」を受ける中、経済発展に不可欠な技術を自国で開発する「テクノロジーの自立」を目指していく。

 また、「二つの循環」とは、内需の拡大という「国内大循環」と、海外から技術や投資を呼び込む「国際循環」を連結していくことを指す。海外から部品を調達し、組み立てた製品を海外に輸出するというこれまでの経済発展パターンは、国内の人件費高騰や米国との対立で難しくなっている。部品の製造から組み立て、販売まで国内で完結し、市場を拡大する「国内大循環」を経済発展の主力としようとしている。

 そして、2035年までの長期目標では、「1人当たりの国内総生産(GDP)を中位の先進国並みに引き上げる」「主要分野の核心技術で重要な突破(ブレークスルー)を成し遂げ、イノベーション国家の先頭に並ぶ」「都市と農村の格差是正に取り組む」と表明した。

 2035年は、中国が「社会主義現代化強国」の完成を目指すという2050年までの中間点。今回のコミュニケでは「2035年に社会主義の現代化を基本的に実現する」と宣言した。

 米国との対立の長期化や、コロナ禍による世界的な先行き不透明感で、中国経済への悲観的な見方もある中、イノベーションの自立により経済成長を続け、国内市場の拡大により都市と農村の格差も是正するという「未来予想図」を示すことで、「ぶれない中国」を世界にアピールする狙いがある。

 ただ、2035 年に1人当たりGDPで中等先進国のレベルに達するには、やはり高い経済成長率が必要となる。中国は2019年、1人当たりのGDPが初めて1万ドルを突破した。世界では69位。1位のルクセンブルク約11万5000ドル、7位の米国約6万5000ドル、25位の日本約4万ドル、30位の韓国約3万1000ドルと比べても大きな開きがある。中国は2035年の1人当たりGDPの数値目標は掲げていないが、仮に3 万ドル(約300万円)とした場合、これから15年間、毎年 7%の経済成長が必要となる。今後の経済成長は「質」を求めるとしながら、長期目標の達成にはやはり「量」も必要となる。質と量を求める中国経済の行く末には、まだまだハードルが待ち構えている。(c)東方新報/AFPBB News