【10月31日 AFP】インド・ヒマチャルプラデシュ(Himachal Pradesh)州の歴史ある州都シムラ(Shimla)が、サルの大群に脅かされている。避妊手術や、薬物での違法な駆除で数を減らそうとしているが、サルたちはしばしば観光客を襲い、農場を荒らしている。

 インド全土で新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)が実施されると、サルは食べ物を求めて街を離れ、田舎に移動した。だが、ロックダウンが緩和されるにつれ、サルは街に戻って来て、以前と同じように住民を襲い、食べ物の入った買い物袋を奪っている。

 ヒマラヤ山脈(Himalayas)のふもとに位置する人口16万人のシムラは、英国領時代に避暑地として開発され、今でも人気を集めている。しかし、インドの焼けつくような夏の日差しを逃れてきた観光客たちの捨てる食べ物がサルを呼び寄せ、今ではおなかをすかせたサルの群れが多い時には50ほど街をうろついている。

 ナンド・ラール(Nand Lal)さん(46)も被害にあった一人だ。ラールさんはサルと戦った時にできた傷を見せながらこう話した。

「サルの群れの近くを通ったら、ボス猿が突然襲ってきて、さらに3匹が攻撃してきた」「運よく棒をつかんで追い払えたが、顔と頭は傷だらけになった。背中のかまれた場所からは出血していた」

 ラールさんは、何回か狂犬病ワクチンを打つことになった。

 現在、シムラ郊外のサンジャウリ(Sanjauli)の住宅の多くは、サルの侵入を防ぐためテラスや窓に金属製のフェンスを設置している。サルは冷蔵庫の中身を盗んでいくこともある。

 州内のサルの数は約13万匹と推定されている。人間を攻撃していなくとも、農場から果物や作物を盗んだり、荒らしたりしており、被害額は毎年数百万ドルに上る。

 サルはヒンズー教で神聖な動物とされている。だが、インド政府は資産を脅かす場合には殺してもいいと宣言した。

 公的な駆除はまだ行われていないが、農民らはこれまで違法に数百匹のサルに毒物を用いている。また、個体数を減らすため、シムラなどヒマチャルプラデシュ州の複数の都市は、サルに不妊手術を施そうとしている。

 同州でここ数年、不妊手術を受けたサルは約15万7000匹となっている。ある専門家は、問題解決にはこれが「唯一の方法だ」と話している。(c)AFP/Bhuvan BAGGA