【10月23日 東方新報】中国では今、家でペットを飼う人々がものすごい勢いで増えている。ペットの数は1億匹目前に迫り、ペットビジネスは3兆円産業に発展し、日本の市場の倍になった。中国はいかにして「ペット大国」になったのか。

 ペット産業のデータによると、2019年に中国でペットを飼っている人は前年比8.2%増の6120万人で、ペットの犬・猫は8.3%増の9915万匹に上る(犬が5503万匹、猫が4412万匹)。ペット市場の伸び率はそれ以上。2015年のペット市場は978億元(約1兆5471億円)だったが、わずか4年後の2019年には倍以上の2212億元(3兆4992億円)に膨れあがった。10兆円市場の米国には及ばないが、1.5億円市場の日本の倍以上となった。

 内訳はペットフードの主食が39.4%、副食が19.5%と食べ物が半分を占め、その他は日用品11.7%、医療10%、薬品9%、美容5.8%と続く。

 このため中国の各業界は、ペットビジネスを取り込む「本業+ペットサービス」が盛んだ。中国のフードデリバリー大手「餓了麼(Ele.me)」は2019年から、ペット用の食事デリバリーを開始。125元(約1977円)の高価なメニューもある。ペット同伴OKのレストラン、ホテル、遊園地など「同伴ビジネス」も増え続けている。

 こうしたペットブームはなぜ生まれたのか。

 1949年に中華人民共和国が建国されて以降、「ペットはぜいたく」という概念が長く続いたが、近年の急激な経済成長に伴い、そうした意識は薄れてきた。経済的余裕が生まれ、2010年以降あたりからペットを飼う家庭が急増した。

 さらに特徴的なのは、ペットの飼い主は若者が圧倒的なこと。2019年のデータによると、飼い主の45.2%が1990年代以降の生まれで、1980年代が29.5%と続く。「一人っ子世代」の若者が自立して単身生活を送り、生活を潤すパートナーとしてペットを飼うケースが多い。中国では子どもに早く結婚を望む親のプレッシャーは日本の比ではないが、都市部では不動産価格が高騰し、結婚したくてもできない問題が出てきている。若者の心の寂しさをペットが埋めている側面もある。

 そして男女別で見ると、女性が88.4%と大半だ。つまり若い独身女性の飼い主が非常に多い。学歴で見ると84.8%以上が専門学校卒か大卒以上。月収別では4000元(約6万3276円)以下が49.6%、4000元から1万元(約15万8191円)未満が26.2%、1万元以上が24.2%。4000元は中国の大卒の若者としては比較的少ないが、1万元は高収入の部類に入る。

 一方で、ペットビジネスの乱立により、「善しあしの見分けがつかない」という問題が起きている。eコマース(電子商取引)大国の中国では、3兆円市場のペットビジネスのうち、消費者はペット関連商品の90%はインターネットを通じて購入している。ペットフードや日用品など、業者の宣伝と異なる商品が届くことが少なくない。また、動物病院やペット美容院も次々と誕生し、治療やサービスの水準が異なっている。

 業界の成長が急激で行政の監督や基準が追いつかないという、中国経済の典型的な例の一つといえる。ペット業界も「爆走を続けながらルールができていく」パターンになっていきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News