【10月16日 AFP】新型コロナウイルス対策としての「集団免疫」について、科学的根拠のない「危険な誤った考え」を助長していると警鐘を鳴らす書簡を、医療専門家らが15日、英医学誌ランセット(The Lancet)に発表した。

 世界各地の大学の専門家80人以上は公開書簡の中で、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)下における超過死亡を抑止する唯一の効果的な方法は、感染拡大を抑えることだと主張した。

 多数の米メディアは今週、世界で9000人分以上の署名を集めた集団免疫を提唱するオンライン宣言について、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米政権の高官が支持を表明したと報じていた。

 書簡を発表した医療専門家らは、集団免疫の考え方には多くの問題があると指摘。第一に、「若年層における制御されていない感染は、全年齢層に高い罹患(りかん)率および死亡率をもたらすリスクがある」。そうなれば、医療制度を崩壊させ、壊滅的な人的・金銭的損害をもたらすという。

 専門家らは、再感染の可能性にも言及。集団免疫は、新型コロナに感染した人が有意な期間、免疫を維持すると保証するのものではなく、重症化しやすい人に「無期限」のリスクをもたらすと指摘した。

 さらに、ワクチンが発明される前に多くの感染症と同じように、集団免疫は新型ウイルスの「周期的な流行」につながると専門家らは主張。「経済と医療従事者に受け入れ難い負担をかけることになる。医療従事者の多くは、災害医療に携わった結果、新型コロナウイルスで死亡したり、トラウマを経験したりしている」と述べた。(c)AFP/Patrick GALEY