【10月9日 AFP】ロシアのカムチャツカ(Kamchatka)地方で、海洋生物の大量死を引き起こした有毒廃棄物の流出とみられる海洋汚染により、カムチャツカ半島に沿って40キロにわたる油膜が形成されていることが分かった。研究者らが9日、明らかにした。油膜は太平洋を南に向かって移動しているという。

 極東連邦総合大学(Far Eastern Federal University)は、油膜は緑色で、幅100~300メートルに及ぶ箇所もある。異常な泡を立てながら、カムチャツカ半島に沿って南に移動していると発表した。

 油膜はこれまで、静止状態で、ほぼ1か所の海岸にとどまっていると考えられていたが、研究者らが航空撮影を行ったところ「小さくなることなく」、日本と領有権を争うクリール諸島(Kuril Islands、北方領土を含む千島列島)に向かって「徐々に南に移動している」ことが分かったという。

 研究者らは悪天候にもかかわらず、ヘリコプターからサンプルを収集。分析は極東のウラジオストク(Vladivostok)で行う予定だという。

 この海洋汚染は9月、地元のサーファーらが目の痛みを訴え、海水の色が変わり、異臭を放っていたと報告したことで発覚。アザラシやタコ、ウニなどの海洋生物の死骸が大量に打ち上げられているのが発見された。

 カムチャツカ地方のウラジーミル・ソロドフ(Vladimir Solodov)知事は以前、海洋汚染の発生源について、同地方の主要都市ペトロパブロフスクカムチャツキー(Petropavlovsk-Kamchatksy)から35キロ離れたコゼルスキー(Kozelsky)に位置する、旧ソ連時代から地下深くに有害物質を貯蔵していた場所の可能性が高いとの見解を示していた。

 複数の専門家らは、近隣の軍事施設から流出したヘプチルやサミンのような有毒なロケット燃料や混合物質が、汚染の原因の可能性があるとしている。

 ソロドフ氏は8日、サンプルの検査結果からヘプチルは原因ではないと明言。検査では燃料物質が検出されたが、海洋生物の大量死を招くほどの濃度ではなかったという。

 ソロドフ氏によると、これまでに約20人が検査を受け、8人が3度の角膜化学熱傷と診断された。(c)AFP