■「まだ自由はない」

 法律扶助団体によると、2014年のクーデター前に不敬罪で禁錮刑となったのはわずか6人だった。そのうちの一人サムヨット氏は、今はなき雑誌「タクシンの声(Voice of Thaksin)」に架空の王の風刺記事を掲載したため、2011年に不敬罪で有罪となった。

 サムヨット氏は2018年に出所したが、軍事政権がまだ権力の座にあることに失望したと振り返る。「この社会には、まだ自由はなかった」

 最近では112条の適用は少なくなっているものの、5年に及んだ軍事政権の終わりまでに、不敬罪で有罪とされた人は少なくとも169人に急増した。

■最悪の事態に備える

 元脚本家のプロンティップ・マンコン(Prontip Mankhong)氏は、ある作品が中傷的だと判断され、禁錮2年の判決が言い渡された。

 現在欧州に留学しているプロンティップ氏は、オンラインで抗議活動を追っており、学生リーダーらの身を案じている。「タイで王室と闘うことを選択したなら、最悪の事態に備えなければならない」

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)によると、2014年のクーデター以降にタイを逃れた民主活動家少なくとも9人が、この2年間で行方不明になっている。

 学生デモに対抗し、王室擁護団体も誕生している。また、プラユット氏はデモが度を越せばタイは「炎に包まれる」と警告した。

 だが、こうした脅迫はもはや効果はないとパイ氏は指摘する。

 新たな扇動罪に問われているパイ氏は「私たちはかつて、厄介者やはみだし者と呼ばれていたが、もう(脅しに)効果はない。人々は目覚めたのだ」と述べた。(c)AFP/Dene-Hern Chen and Pitcha Dangprasith