【10月1日 AFP】インドの裁判所は9月30日、数十年前に発生した暴徒によるモスク(イスラム礼拝所)破壊を企てた罪に問われていた与党幹部らに無罪を言い渡した。この宗教間対立によって2000人以上が死亡している。

 1992年にアヨドヤ(Ayodhya)で、ヒンズー国家主義を掲げるインド人民党(BJP)の支持者数万人と複数のヒンズー教集団が、つるはしやすきで武装し、ヒンズー教寺院建設を目的に、16世紀に建造されたモスク「バーブリー・マスジッド(Babri Masjid)」を破壊した。

 ヒンズー教徒の多くは、モスクが立てられていた小さな土地を戦士である神ラーマ王子(Lord Rama)誕生の地だとしており、インドにおけるヒンズー教とイスラム教の分断を象徴する場所になっていた。

 暴徒はラール・クリシュナ・アドバニ(Lal Krishna Advani)元副首相やムルリ・マノハー・ジョシ(Murli Manohar Joshi)元BJP総裁、ウマ・バーティ(Uma Bharti)氏を含むBJP幹部が率いていたとされている。

 アドバニ氏らは後にモスク破壊を企てたと非難され、30人を超えるBJP幹部と共に、犯罪を共謀し、憎悪を増幅し、暴徒を扇動した罪で起訴された。

 だが、北部ラクノー(Lucknow)の特別法廷は、検察は有罪を証明できなかったとした。裁判長は「反社会的集団により建造物が破壊された。被告である幹部らは、この集団を制止しようとした」と述べた。

 裁判は約30年に及んだため、この間に被告17人が死亡している。

 信心深いヒンズー教徒らは、ラーマ王子は約7000年前にアヨドヤで生まれ、イスラム王朝ムガール(Mughal)帝国の初代皇帝バーブル(Babur)がラーマ王子生誕の地にモスクを建設したと考えている。

 現在ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相が率いるBJPは1980年代後半、ラーマ神を祭る寺院を建立するための支援を呼び掛ける全国的な運動を立ち上げた。

 現在92歳のアドバニ氏は当時、数万人の支持者を率いて数か月にわたる全国的なデモを行った。その後、暴徒がモスクを襲撃した。

 モスクの破壊はインドで最悪の宗派間暴動に発展したため、裁判が長引いていた。(c)AFP/Jalees ANDRABI