【12月17日 AFP】インドで新たに制定された市民権改正法(CAA)をめぐり、今年5月に2期目をスタートさせたナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相が、世界最大の民主国家である同国をヒンズー教国家につくり変えようとしているのではないかとの懸念が広がっている。2億人に及ぶ国内のイスラム教徒や少数派、さらには国際社会もが不安を抱くモディ氏のヒンズー至上主義的な政策について、AFPが考察を試みた。

■唯一イスラム教徒が多数派を占めるジャム・カシミール州の自治権剥奪

 インドとパキスタンが領有権を争うカシミール(Kashmir)地方のインド側、ジャム・カシミール(Jammu and Kashmir)州は10月31日まで、インドで唯一イスラム教徒が多数派を占める州として特別な地位と部分的な自治権が認められていた。この特別扱いに対して長年、ヒンズー至上主義者は反感を抱いてきた。

 インド議会は8月5日、ジャム・カシミール州を中央政府の直轄領として二つに分割する法案を成立させた。モディ氏は、この措置は経済発展を促し、汚職を取り締まるためと説明しているが、数十年にわたり武装勢力が反政府運動を展開してきた地元の住民たちは、真の理由はヒンズー教徒の移住を認め、州のアイデンティティーを薄めるためだと考えている。

■国民登録簿から除外され190万人が無国籍状態に

 政府は8月、北東部アッサム(Assam)州の国民登録簿(NRC)を発表。資格なしと判断されて登録簿から除外された190万人は無国籍状態に置かれ、収容所に送られるか、国外追放される可能性に直面しているが、このうち大多数を占めているのがイスラム教徒だ。

 モディ氏の側近アミト・シャー(Amit Shah)内相は今月、「侵入者」を排除する目的で、2024年までに国民登録簿を全国的に整備すると言明した。

 モディ氏は、首相1期目には多くのイスラム風の地名を変更し、歴史の教科書からインドにおけるイスラム教徒の役割を削除した。このためイスラム教徒は、シャー氏の国民登録簿の整備はイスラム教徒を念頭に置いているのではないかと懸念している。