【9月29日 AFP】ネパールは28日、主に女性が被害者とされ深刻な後遺症を残す酸攻撃に対する刑罰を厳格化し、酸の製造および使用を制限する改正法を施行した。酸攻撃の被害者やその支援者が長年行ってきた訴えが実った形だ。

 外見に大きな損傷を受け、しばしば失明することもある酸攻撃は、南アジアを中心に報復として行われることが多い。被害者は大半が女性で、結婚の際の持参金や土地をめぐる争い、言い寄った男性を拒絶したことなどが原因でトラブルに巻き込まれ被害を受ける。

 警察によると、ネパールでは過去7年間で20件の酸攻撃が起きている。28日に施行された改正法は追って年内に再開される議会で承認される見通し。

 改正法では、酸攻撃の最高刑が8年から20年に引き上げられ、最高100万ネパール・ルピー(約88万円)の犯罪被害者給付金も支給可能となる。その他の改正点として、酸攻撃をめぐる裁判の迅速化が可能になることや、酸販売者に購入者の身元詳細の記録を義務付けること、酸の購入可能年齢を18歳以上に制限することなどが盛り込まれた。

 法改正を受け、被害者の一人、ムスカン・ハトゥン(Muskan Khatun)さん(15)は、「夢がかなった」と語った。ハトゥンさんは昨年9月に酸攻撃を受け、今も顔、胸、両手に負ったやけどの治療を続けている。言い寄ってきた10代の少年の誘いを断ったことから、この少年ら2人に数か月にわたって嫌がらせを受けた末、通学中に酸をかけられた。

 ネパールでは一昨年、酸攻撃に特化した法律が導入されていたが、ハトゥンさんの事件をきっかけに全土で怒りと法律の強化を求める声が上がった。ハトゥンさんは今月に入り、酸攻撃の厳罰化を求めてK・P・シャルマ・オリ(K.P. Sharma Oli)首相にも面会した。

 ハトゥンさんは酸攻撃について、「これは(被害者に)一生つきまとう犯罪。こんな攻撃の犠牲になる人がいなくなることを願う」と語った。(c)AFP