【9月28日 東方新報】中国国務院弁公庁はこのほど「耕地の非農化行為制止決定に関する通知」を発表した。この通知によれば、目下6種類にわたる耕地の「非農化」行為が突出して進んでおり、こうした耕地の農業以外の利用を断固阻止する姿勢が強く打ち出された。

 中国農業農村省共産党組織員兼党中央農村工作指導チーム弁公室秘書局の呉宏耀(Wu Hongyao)局長は、18日の政策ブリーフィングで「耕地は食糧生産の重要な基礎であり、14億人の胃袋を支えるためには18億ムー(約120万平方キロ)の耕地というレッドラインを絶対維持しなければならない」と強く訴えた。

 呉局長によれば、農耕地資源保護のために、中国は多くの法律を作っているが、一部地方ではその法律がしっかり施行されておらず、耕地の「非農化」現象がすくなからぬ地域で依然突出しているという。もしそのままにしておけば、将来的の国家の食糧安全を脅かし、経済社会の安定的な大局にも影響をおよぼしかねないという。

 通知では具体的に6つの「非農化」問題について「厳禁」を命じている。

 まず、違法に耕地を緑化造林することは厳禁。2つ目に基準を超える道路わきの緑化地を設けることは厳禁。道路沿線が耕地の場合、道路の両側の緑地化は5メートルを超えてはならない。県や農村の道路の場合はこれが3メートル以内でなければならない。3つ目に耕地に違法に湖を造るなどの造景をおこなうことは厳禁。4つ目に永久基本農耕地を自然保護地に拡大することは厳禁。5つ目に違法に耕地に非農業的な建造物を建設することは厳禁。特に耕地に住宅などをやたらに建設したりしてはならない。6つ目に、県や農村レベルで国土空間計画を好き勝手に調整して、永久基本農耕地の認可を回避してはならない。

 呉局長は「耕地の『非農化』は耕地面積に影響するだけでなく、耕地の質にも影響し、特に苗木や芝生など緑化装飾植物を植えることで、耕作用の地層に不可逆な悪影響を与えうる」と警告。「関連の地方政府機関は急いでこの問題に関する政策措置を調整、改善し、通知に違反している事例を即刻取り締まり、新たな耕地の『非農化』問題の発生を阻止するように」と指示した。

 また、中国自然資源部の王広華(Wang Guanghua)次官はこうした「非農化」問題について、「排斥すべきは排斥し、没収すべきは没収し、責任を問うべきは責任を問い、耕地に回復するべきは期限を切って回復する」と強調。地方政府が責任を持って、耕地「非農化」における「6つの厳禁」を徹底させ、省レベル政府の耕地保護責任の履行目標を来年からの官僚の評価基準とするとした。

「最も厳格な耕地保護制度を実施する」と王次官は言い、さらに目下行っている第3次全国国土調査とリンクさせ、正確に非農化耕地の現実の状況を把握したうえで、2020年から2035年の国土空間計画と合わせて、生体保護レッドライン、永久基本農耕地保護コントロールライン、農村都市化開発制限の3つのレッドラインを統合して策定し、監督管理を強化し、耕地保護を強化する、とした。

 こうした通知の背景には、中国で新型コロナウイルス感染症や大水害、イナゴ被害の影響で食糧安全問題に危機感がもたれていること、また農村土地の、市場化の動向の中で、地元政府の利潤追求姿勢や規則・法律のあいまいさのために、農耕地の転用ルールが十分に守られていないことなどがある。

 例えば河南省(Henan)南陽市(Nanyang)と畜産企業の牧原集団が推進する養豚場「百場千万」プロジェクトでは、今年だけで同市13県に84か所の養豚場が建設された。うち55の養豚場が永久基本農耕地を含む1.5万ムー(約1000万平方メートル)の土地を占用している。これは昨年来、豚肉価格が高騰しているため、市場の安定を保障するため、自然資源省の通知をうけて、南陽市政府が企業に耕地の転用を認可したのだった。

 自然資源省は2019年9月に、一般耕地を養豚場に使用することを許可すること、このための煩雑な審査批准手続きを省略してよいことなどを通知していた。2019年末に出した通知では、養豚場などの施設は原則上、永久基本農耕地を使用してはならないが、少量の永久基本農耕地を含むことは避けられない、とした。ただし、その場合は永久基本農耕地を新たに区画して補塡(ほてん)しなければならない、とした。

 政策の本意としては、養豚場の創業に便宜を図る一方で、大量の永久基本農耕地を占有してよいと単純に受け止めないように、ということだが、「少量」の永久基本農耕地の基準があいまいであり、また新たに永久基本農耕地を区画して補充することが事実上、困難ということもあり、この通達は、永久基本農耕地の転用の口実にされた。実際には河南の養豚場の中には100%永久基本農耕地を占用しているところが3か所もあった。地元政府も、豚肉の高騰で、農作物収入よりも利益率が高いと見たことがこうした永久基本農耕地の乱用を許した。

 自然資源部は続けて、養豚施設などのために使ってよい永久基本農耕地は総面積の30%以下という基準を出すなど、補足通知で対応したが、今回改めて、永久基本農耕地の保護の徹底を通達したわけだ。

 じつのところ、豚肉の生産回復は比較的早いが、いったん破壊された小麦畑は回復が困難だった。養豚場建設のために、すでに小麦が植えられていた耕地が破壊された悪質な例もあり、目下、牧原集団のプロジェクトは停止され、専門家チームによる調査を待って、問題の処理に当たるという。

 永久基本農耕地は、一般耕地以上に、特に良質な耕地として、国家食糧安全確保のために重要な意義がある。一時の短期的利益のために、これを軽視することはあってはならない、と改めて全国に通達したかっこうだ。(c)東方新報/AFPBB News