【9月26日 東方新報】中国有人宇宙飛行プロジェクト副長官の周雁飛(Zhou Yanfei)氏は18 日に開かれた中国宇宙大会で、「現在、有人月面着陸の研究を深めている」と述べ、新型の運搬ロケット、有人宇宙船、月面着陸機の研究・開発を進めていると明らかにした。以前から構想が進められてきた有人月面着陸構想が、ついに具体的レベルの「軌道」に乗り始めた。

 周氏は「新型ロケットは従来の従来のエンジンやロケット本体構造を受け継ぎ、大きな規模となる。現在、新型ロケットが月軌道に入るまでのモデルルートを作っており、その検証を進めている」と説明した。新型ロケットは全長90メートル、直径5メートル。離陸重量は2000トンで、70トンの搭載物を地球の低軌道に、25トンを月軌道に送り込むことができる。2028年頃の初飛行を予定している。

 周氏は「新型のロケット、有人宇宙船、月面着陸機のほか、月軌道ステーションと有人月面移動実験室も研究している」と話し、将来的には月での長期滞在を目指していることも説明した。

 中国の月探査計画は「繞(軌道に乗せる)」「落(着陸)」「回(土壌サンプルを持ち帰る)」の3段階で進んできた、2007年に月周回衛星「嫦娥(Chang'e)1号」を打ち上げて月の周回軌道に乗り、第1段階の「繞」をクリア。2013年には嫦娥3号が月面軟着陸に成功し、第2段階の「落」を達成した。そして今年10月に打ち上げる「嫦娥5号」が第3段階の「回」、すなわち月の土壌や岩石を持ち帰るサンプルリターンに挑む。月面到着後、ロボットアームで土壌を採取し、さらに穴を掘って深層土壌も採取して両者を比較する。サンプルを搭載した離陸機は宇宙船とドッキングし、土壌を移し替えて帰路へ向かう。月面上陸、土壌採取、ドッキングはすべて世界で初めて人工知能(AI)の判断で行う。

 第3段階の計画が順調に進めば、有人月面着陸がいよいよ現実味を増してくる。米国では1969年のアポロ11号から1972年のアポロ17号まで12人の宇宙飛行士が月面着陸を果たしているが、米国の宇宙飛行士以外で初めての「ムーンウォーカー」が誕生する日が近づいている。

 一方、元祖宇宙大国・米国も指をくわえて黙っているわけではない。米航空宇宙局(NASA)は、男女の宇宙飛行士を2024年までに月に送り込む「アルテミス計画」の詳細を発表した。実現すれば1972年以来で、女性は史上初めて月に降り立つことになる。NASAはアルテミス計画のために、2025年までに280億ドル(約3兆円)の予算を要求している。

「嫦娥」は中国の神話で月に渡った仙女。「アルテミス」はギリシャ神話に登場する月の女神で、アポロの双子の姉妹。神話の世界も巻き込んで、宇宙空間を巡る米中の覇権争いは続く。(c)東方新報/AFPBB News