【9月20日 東方新報】中国のインターネット上で最近、江西省(Jiangxi)南昌(Nanchang)の「山寨長城(パクリ長城)」の動画が「長城ファン」たちの間で物議をかもしている。

 世界遺産にも指定されている万里の長城「八達嶺長城」とまったく同規模でつくられた全長4キロの「パクリ長城」。形、大きさは本物と寸分たがわない。唯一の違いは石材が全部現在のものだということだ。

 南昌市中心部から25キロのところに、南昌怪石嶺生態公園景区として2012年から1億元(約15億円)以上かけて建設された。2015年に落成し公開され、今は週末ごとに、多くの観光客が訪れている。この山寨長城を建設するにあたっては環境生態保護も考えて、大型重機を使わず、ラバ隊で山頂まで石材を運び、手作業で石をはめ込んでいったという。観光客は「長城にきた!」とセルフィ―をとれば、SNS上でだまされる人もいる。

 だが一部の長城ファンのネットユーザーの中には、「こんなものを作るぐらいなら、貧困プロジェクトに投資した方がまし」「このようなものは形式主義として批判されるべきだし、それ以上に地元の生態環境破壊だろう」と批判の声も多い。

 この山の尾根をくねくねと伸びる山寨長城は、南昌市が農業観光長廊プロジェクトとして最初に建設したもので、観光客を呼び込み、地元農村に「農村観光」のビジネスチャンスを提供することを目的にしている。運営は地元農民による農村企業だ。

 こうした農村レジャー観光目的の「パクリ長城」は南昌市以外でも、成都(Chengdu)金龍湖風景区、重慶(Chongqing)洋人街、江蘇省(Jiangsu)華西村などにも、数百メートルから数キロの規模で建設されている。

 南昌怪石嶺生態公園景区の責任者の施国平(Shi Guoping)氏は、一部のネットユーザーからの批判について、「当時、この長廊を作った主要な目的は、防火と景観の両方の要因があった」と説明する。2010年の清明節(4月5日、祖先の墓参りを行う日)に山頂付近で火事がおき、あわや麓に燃え広がりそうな事態があった。このときに、防火壁の建設の必要性が訴えられた。一方で、この地方の景観を利用した農村観光の可能性が模索されており、この二つの命題をリンクさせて、このパクリ長城のアイデアに行きついたという。

「中国の長城は中華民族の一種の精神だ。この精神は中国人すべての人たちがもつことができる。“長城”に上って田園風景を眺めたときのある種の感覚が長城精神であり、そうした長城精神はどこにあってもいい。」と訴える。

 中国長城学会の董耀会(Dong Yaohui)副会長はこの「パクリ長城」について「長城文化をなんら破壊していないしじゃまもしていない。むしろ、発揚効果があり、長城文化発信の一つのプラットフォームになる。ここに上って、長城の歴史と文化をより多く感じてもらえるならよりよい」という。

 一方、北京聯合大学レジャー・観光発展研究所の徐菊鳳(Xu Jufeng)所長は「あちこちで大量のパクリ景勝地が次々誕生しているが、これは明らかな観光需要に迎合しており、利益を生んでいる」と肯定的に受け止めるも、ミニチュア景観や模倣モニュメントを観光の目玉とすることは、ブランドに対する不公正競争を引き起こし、「悪貨が良貨を駆逐する」おそれもあるため、推奨はされない、と苦言を呈している。(c)東方新報/AFPBB News