【9月19日 AFP】台湾で屋台を経営する呉黄義(Wu Huang-yi)さん(80)が大きな蒸し器のふたを開けると湯気が上がり、中から台湾式バーガー「刈包(グアバオ)」の20個余りの熱いバンズが現れた。刈包は、円形の平たいまんじゅうに豚の角煮と野菜の漬物、香菜(シャンツァイ)、ピーナツの粉などを挟んだものだ。

 昼食時、台北(Taipei)で最も古い華西街観光夜市(Huaxi Night Market)にある呉さんの屋台には、狭い調理場でぐつぐつ煮える鉄鍋から匂い立つ豚バラ肉を味わおうとする人たちですでに行列ができている。 

 独学で料理を習得した呉さんは、自慢の豚の角煮を20年以上前に完成させた。特別に調合した材料で何時間も煮込む豚バラ肉を選ぶため、今も毎朝5時に市場に出向いている。

「私のまんじゅうはすべて手作りだから他とは違う。ふわふわだけど、もっちりしているのでおいしい」と呉さんは言う。

「すべて伝統にのっとっている、それがうまさの理由だ」

 刈包は、船の形をした中国の昔の銀貨に似ており、繁栄を表す縁起物として、しばしば結婚披露宴や企業の式典の場で提供される。

 しかし呉さんは、妻と3人の成人した子供、孫1人を含め、家族全員が手伝う屋台で、刈包を1つ2ドル(約210円)未満で販売している。

 そんな呉さんのひたむきな働きがついに報われ、今年8月、呉さんの店「源芳刈包(Yuan Fang Gua Bao)」はレストラン格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」に認定され、コストパフォーマンスが高いレストラン「ビブグルマン(Bib Gourmand)」リストに掲載された。ビブグルマンは、良質の料理3品を頼んでも1000台湾ドル(約3600円)を超えない軽食店に与えられる。

 台湾は、郷土料理の豊かな伝統と、中国本土からの移民コミュニティーによってもたらされた料理が非常に多く、現在ミシュランガイドに掲載されている店舗は200以上に上る。(c)AFP