【9月12日 AFP】台湾で今週、巨大に太らせた豚を解体して展示する伝統の祭りが開かれた。ただこの伝統には賛否両論があり、動物愛護団体の活動で見方に変化が生まれていることから、観客も出品される豚の数も減少傾向にある。

 毎年恒例のこの行事は、台湾の人口の約15%を占める客家(Hakka)の人々にとって文化の礎の一つとなっている。しかしこの慣習に対する意見は、長く二分されてきた。

 客家の人々は、どの家が最も巨大な豚を展示できるかを競い合い、勝者にはトロフィーが贈られる。

 7日には、北部の新埔(Hsinpu)にある義民廟(びょう、Yimin Temple)と呼ばれる寺院に、解体された豚18匹がトラックで運び込まれた。

 最も重い豚は、成豚の平均体重の3倍に相当する860キロもの重さがあった。祭りの後には所有者が豚を持ち帰り、家族や友人、近隣住民に肉をふるまう。

 客家のある男性はAFPに対し、「私は客家の一人として、神豚の文化を誇りにしている。保存価値がある」と語り、動物愛護団体の懸念は「ナンセンス」だと切り捨てた。

 そして「広まっているうわさとは違い、動物虐待などない」と断言した。

 これに対し、動物の権利擁護を訴える活動家らは異議を唱える。最重量級の豚たちは、多くの場合狭いおりの中で、病的に肥大し自力で立てなくなるほどの強制給餌が行われると指摘している。

 とはいえ、この神豚祭りを15年にわたって記録してきた地元の活動家のリン・タイチン(Lin Tai-ching)さんは、人々の見方が変わり始めていると話している。祭りの観客は徐々に少なくなっており、犠牲になる豚の数も劇的に減ったという。

 リンさんはAFPの取材に対し、「15年前は100匹以上の豚が出品されていたが、今年は37匹だった」と述べた。

 リンさんをはじめ動物愛護活動家らは、望んでいるのは客家の文化習慣を断絶することではなく、この祭りが持つ特に残酷な要素が改められることだとしている。

「われわれが反対しているのは、豚を犠牲にすることではない。動物の体重を競い合うことに反対しているのだ」と、リンさんは訴えている。(c)AFP/Sean CHANG