【10月11日 AFP】イタリア・ベネチア(Venice)は観光名所のサン・マルコ広場(Saint Mark's Square)やため息橋(Bridge of Sighs)で有名かもしれないが、この都市には見過ごされることの多い魅力がもう一つある。それはラグーン(潟)だ。

 かつては多様な魚や鳥が生息していたラグーン内は、人間の干渉によって水の塩分濃度が劇的に上昇した。

 これを受け2017年、ラグーンに淡水を引き入れ、かつての栄光を取り戻すことを目指す環境整備計画「ライフ・ラグーン・リフレッシュ(Life Lagoon Refresh)」が立ち上げられた。

 計画を率いるイタリア環境保護調査高等研究所(ISPRA)の研究者ロッセラ・ボスコロ・ブルサ(Rossella Boscolo Brusa)氏はAFPの取材に、「河川がラグーンを迂回(うかい)するようにしたことが原因で長い間に失われた環境を再構築することが、この計画の狙いだ」と語った。

 ブルサ氏によると、河川を迂回させたのは、湿地域を浄化してマラリアに対処することが目的だったという。だが、この活動は思いがけない結果を招いた。

「水の塩分濃度が上昇し、アシの生育数が減少した。アシは保護対象の生物種や商業的利益がある生物種などの非常に貴重な生息環境となる」と、ブルサ氏は指摘した。

 伊ベネチア・カフォスカリ大学(Ca Foscari University of Venice)の専門家、アドリアーノ・スフリーソ(Adriano Sfriso)氏によると、かつてラグーンの半分以上はアシが生い茂る塩性湿地だった。その面積は約1万7000ヘクタールに及んでいたが、現在では、わずか34ヘクタールしか残っていないという。