■過去の職員削減が足かせに

 南部セビリア(Seville)で2人の子どもを育てる女性、マルタ・サンチェス(Marta Sanchez)さん(42)は6月26日に申請を行ったが以来、何の音沙汰もないという。

 サンチェスさんはコロナによるロックダウン(都市封鎖)の間にコールセンターの仕事を失い、夫も運転手の職を失った。夫婦は初めて食料を赤十字(Red Cross)に頼ることになった。

「ありがたいことに、母と姉妹が私たちの水道代と電気代を払ってくれて助かった」とサンチェスさん。大家は親類で、家賃の滞納を見逃してくれているという。

 CSIFのモリナ氏によるとこれは新しい状況で、何年にもわたる公共サービスの予算削減、とりわけ過去10年間で職員が25%減少したことでさらに悪化している。「すべてを大慌てでやったところに問題がある。訓練もなく、しかも大幅な職員不足の中でやったからだ」

 モリナ氏によるとベーシックインカム制度を担当する社会保障部門には、わずか1500人の公務員しかいない。彼らは年金申請の大半の処理も受け持っている。

 申請数は今後も増加が見込まれている。政府は同制度によって約85万世帯、計230万人が恩恵を受け、うち30%は未成年者だと想定している。

 公務員労組CSIFによると、政府はベーシックインカム制度の開始時、必要なのは簡単なオンライン申請だけだと説明していた。だがそれは、コンピューターやインターネット接続のない多くの低所得家庭にとっては困難であり、面談による申請の待ち時間が約2か月となっている今では、なおさら状況は厳しい。(c)AFP/Emmanuelle MICHEL