【9月2日 東方新報】中国で新型コロナウイルスが流行した時期、仕事を失った多くの人々の受け皿となったのが、インターネットで注文を受けた食事などを配送する「オンライン配達員」だった。それを支えたのがIT(情報技術)。最新のIT技術に基づくデジタル経済は、新しい職業を生み出すインキュベーター(ふ化器)にもなりつつある。

 中国の大手デリバリーサイト「美団点評(Meituan Dianping)」によると、2019年に美団を通じて収入を得た配達員は399万人に達し、前年比で23.3%増加した。今年に入り新型コロナウイルスの感染が全国で拡大すると、多くのレストラン、小売店、工場が一時閉鎖を余儀なくされた。収入がなくなった従業員たちがすぐに選んだのがオンライン配達員だった。感染が最も深刻だった1月20日から2月23日にかけ、美団を通じて新たに7万5000人が配達員となった。中国政府も2月、オンライン配達員を正式な職業として新たに認定し、オンライン配達は都市生活の「新型インフラ」だと強調した。

 新しく加わった配達員は、20代が半数近く、30代が40%近くを占めている。元の職業別では、ホテルやパーティーなどに食事を提供するケータリングなどのサービス業が37.6%、製造業が27.2%、小規模の起業家が13.8%となっている。

 日本でも新型コロナが拡大して以降、ウーバーイーツ(UberEATS)の配達を始めた人は多い。中国のオンライン配達の特徴は、ITを駆使して無接触配送を徹底していることだ。配達員はアプリで仕事の依頼を受けると、厳しく決められた配達制限時間以内に注文先に到着。マンションやアパートの入り口に料理を置き、電話やチャットアプリで配達を伝える。代金の支払いもオンライン決済なので、注文した人は配達の連絡を受けた後、料理を取りに行けばいい。

「デジタル経済」というと、IT、第5世代通信ネットワーク(5G)、人工知能(AI)といった分野が浮かび、高学歴で高いスキルを備えた人材に限られたものというイメージがある。だが、実際の雇用需要を見ると、多様な学歴層の人々を吸収していることが分かる。

 中国情報通信技術院のリポートによると、2018年のデジタル経済に関連した168万件の求人情報を分析したところ、高いスキルが必要な求人では大卒以上が37.8%を占めた一方、中卒以上や学歴不問の求人も28.9%を占めた。実際、オンライン配達員は地方から都市部に出稼ぎに来た若者が多いが、一般企業の平均月収を上回る1万元(約15万円)を稼ぐ配達員もいる。

 デジタル経済は新しい職業を創造するとともに、就職の柔軟化、流動化を促し、多くの人々に恩恵を与えている。(c)東方新報/AFPBB News