■気候変動対策にも期待される役割

 ドローム(Drome)県に位置し、森林が1平方キロにわたって広がるグラン・バリー山地は、全長数キロの岩だらけの尾根に貫かれている。

 森に入ると、そこかしこでかさかさと音がする。シャモア(レイヨウとシカの交配種のような動物)、アカシカ、オコジョ、アナグマ、爬虫(はちゅう)類が動く音、数え切れない種の植物や花が立てる音だ。上空では、イヌワシが戦闘機のように空を切って飛んでいる。ハヤブサ、ハイタカもいる。

 この区域では魚釣り、狩猟、木材の切り出し、耕作、大きな集会、車の乗り入れが禁止されており、適用されている保護措置は、国際自然保護連合(IUCN)の最も高い保護カテゴリーと同レベルで、国立公園よりも厳しい。

 ここの植物相(フロラ)は、「放任」されている。「木が倒れても、そのままにしておきます」とASPAS保護区のコーディネーターのクレマン・ロシュ(Clement Roche)氏は、倒れた木を指さした。腐っていく木には、動植物が集まる。

 ASPASディレクターのマデリーン・ルビン(Madline Rubin)氏は、グラン・バリー計画は「未来の原生林を再生する」ためのものだと話す。

 再野生化は地域の生物多様性に役立つだけでなく、気候変動対策に関して重要な役割を果たすことを期待されている。

 地球の温暖化によって気候変動が進む中、どの種の樹木が最も環境への適応力があるのかについては科学者らも手掛かりをほとんどつかんでいない。

 自然科学の教授、ジル・レイ(Gilles Raye)氏は、再野生化は、その答えを導きやすくする一つの方法だと指摘。「そのままほっておいて、どの種が最も持ちこたえるのか確認すればいい」とAFPに語った。