【11月21日 AFP】野生のハーブの香りがそよ風に乗って運ばれてくる。人の気配はほとんどない。ここ、フランス南東端のグラン・バリー(Grand Barry)自然保護区では、欧州最大級の「再野生化」実験が行われている。

 昨今、植樹による森林再生計画が人気だが、再野生化計画は、人が手を加えずに自然の働きに任せて生態系を回復することを狙いとしている。

 国連(UN)の専門家組織「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」によると、地球上の全陸地は人的活動によって少なくとも4分の3は劣化している。食料と資源への飽くなき需要が高まり、その結果、100万種以上の野生動植物が絶滅の危機にひんし、多くは数十年以内に絶滅すると国連は報告している。

 米国の同様の運動に着想を得たグラン・バリー計画は、野生動物保護協会(ASPAS)の統括の下、森林に一息つく余裕を与えようとしている。

 状況が特に深刻なのは欧州だ。土地が狭いわりに 人口が集中している欧州では、手付かずの自然が残っている場所はますます減ってきている。

 フランクフルト動物学会(Frankfurt Zoological Society)のゾルタン・クン(Zoltan Kun)氏は、再野生化の目標は「人が介入しなくても機能する生態系」をつくり出すことだと話す。

 具体的には、間伐を行わず、種の再導入も全く、またはほとんどしない。一歩下がって、自然に任せるのだ。

 プロセスは食物連鎖の一番下から始まる。森林の中で昆虫や小動物の生息数が再び増えるようになれば、草食動物や肉食動物、猛禽(もうきん)類の数も増える。

 活動には、河川の小型の堰(せき)の撤去から、野生動物が道路の上や下を横断する獣道を突き止め、安全な通路を造ることまで、さまざまなことが含まれる。