■カダフィ大佐の夢…シルトを政府所在地に?

 外国との関係で見ると、GNAはトルコとカタール、ハフタル司令官のLNAはエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、ロシアから支援を受けている。

 GNAのシラージュ暫定首相にとっては、親ハフタル勢力の支配下にあるシルトとジュフラの非武装化は必須だ。一方、LNA側の代表議会議長サレハ氏は、非武装地帯については言及していないが、トリポリのシラージュ暫定政権に代わる新しい大統領評議会をシルトに設置することを提案した。

 この意見の違いは今後を見通す上で示唆に富むと、ドイツ国際安全保障研究所(German Institute for International and Security AffairsSWP)の研究員ボルフラム・ラッハー(Wolfram Lacher)氏は言う。

 非武装化は「現地でのトルコとロシアの影響力排除を狙う米英独の計画」であり、ロシアとUAEが反対するとみるラッハー氏は、「各当事者の独自の利害によって、交渉はどの段階でも容易に脱線する可能性がある」と指摘した。

 米シンクタンク、大西洋評議会のバディ氏は、ジュフラ周辺には「かなりの数の」ロシア人傭兵(ようへい)が展開しているため、ジュフラの非武装化は「争点」になるだろうと指摘する。

 トリポリの銀行家カリマ・ムニール(Karima Munir)氏は「私は常々、リビア人が真剣に停戦を考えるのは壁にぶつかって行き詰まった時だと言ってきたが、今回がそれかもしれない」と話す。「このまま紛争が続けば誰も勝者にならないことを双方とも分かっており、それぞれを支持する勢力もそれを実感している」

 一部のリビア人にとっては、シルトを未来の政府所在地とする案は、独裁者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐が自らの故郷であるこの街を首都にしようとした計画を想起させるものだ。「カダフィの悲願だったシルトを政府所在地にする案が今、実現するかもしれないのは皮肉だ」とムニール氏は述べた。(c)AFP/Rim Taher