【8月25日 東方新報】中国で飲食の浪費を制し、節約の生活習慣を育成するために、全国各地で飲食浪費行動制止提案書が続々と発表されている。習近平(Xi Jinping)国家主席がこのほど出した、飲食浪費を戒める「食べ残し禁止」の指示を受けての各地方の対応だが、レストランでは早速メニューを改善したり、注文の仕方に工夫をするなどしたりして、文明的で食べ残しのない飲食モデルの導入が早速はじまっている。

 河南省(Henan)鄭州市(Zhengzhou)のレストランでは自分が食べきれる分だけの料理をとるバイキング形式を導入するところが増えていた。また上海のレストランではこれまでメニューの料理のサイズを全部小さめにして、例えば羊肉のスペアリブも、1本ごとで注文できるようにした。

 オンライン・テークアウトのスタイルも変化してきた。一部レストランではグラム単位の量り売りで提供。また付け合わせの野菜などのバランスを考えた1人分のセットメニューを用意しはじめたところも多い。

 大人数で食べる大皿料理が中心のレストランでは「N-1」注文や「N-2」注文を提唱している。これは食事人数より一人分、あるいは二人分減らした量を注文、または提供するやり方で、例えば10人の宴会であえて9人分か8人分の量を提供し、足りなかったら追加注文してもらうという。

 また体重に応じて料理の量を変えるレストランも湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)などで登場している。レストランに入ると体重をはかられ、その体重に応じたカロリーと量を客に提示することで、過剰な注文を減らしてもらおうというアイデアだ。

 こうした取り組みの背景には中国の深刻なフードロス(食べられる食料の廃棄)問題がある。中国は毎年食糧備蓄、運輸、加工のプロセスにおいてだけでも3500万トンのフードロスが起きていると推計されている。国家統計局重慶(Chongqing)調査チームが2015年にまとめたリポートの推計によると、レストランなどの食卓上で消費する飲食のフードロスは、毎年5000万トンにのぼり、これは3.5億人を一年養える量だという。

 中国では2013年から全国で食べ残し禁止キャンペーン「光盤行動(光盤=皿を空にするの意味)」が打ち出されているが、もともと食べきれないほど食事を出すことがもてなしという伝統もある国で、これはなかなか徹底されていない。

 2018年に中国科学院(Chinese Academy of Sciences)地理科学資源研究所と世界自然基金会(WWF)の合同調査「中国都市飲食浪費報告」によれば、2015年の都市部の飲食業におけるフードロスの量は1700万トン~1800万トンで、3000万人から5000万人の一年分の食糧に相当していた。

 特に大型飲食店やツアー客、中小学校における給食や職場の食堂など、集団飲食の場に問題があり学校給食の現場では廃棄率が38%に上っているという。

 中国は「民は食をもって天となす」という言葉があるほど、もともと食べることを大事する国だ。60年前にはひどい飢饉(ききん)も経験した。だが21世紀に入って、生活が豊かになるについて食糧の大切さへの感覚が失われている。今年は新型コロナウイルス感染症の影響や今年の未曾有(みぞう)の大水害などで食品物価が高騰中で、食糧の大切さに気付く好機かもしれない。14億人口の中国は、長期的には農耕地の減少や気象変動による食糧供給リスクを常に抱えている。こうした懸念を解決し、中国共産党的な倹約の美徳を徹底させるためにも、中国全人代常務委員会法律工作委員会行政法室では、レストランにおける飲食浪費行為を強制的に取り締まる立法の準備にかかっているという。 (c)東方新報/AFPBB News