【8月24日 AFP】ニュージーランド南島クライストチャーチ(Christchurch)の裁判所で24日、昨年3月にモスク(イスラム礼拝所)2か所で銃を乱射し51人を殺害した罪などで起訴されたオーストラリア国籍の白人至上主義者、ブレントン・タラント(Brenton Tarrant)被告(29)の判決公判が厳戒態勢の中始まった。

 遺族や事件で負傷した生存者が傍聴する中、検察は冒頭で、できるだけ多くの人を殺害しようと綿密に練られた恐るべき犯行の詳細を説明。検察はタラント被告が「実際よりもっと多くの人々を撃ちたいと考えていた」と述べたが、被告は無表情に聞いていた。

 被告は殺人罪51件と殺人未遂罪40件、テロ罪1件について罪を認めている。司法関係者は、ニュージーランド初の仮釈放なしの終身刑判決が下ると予想している。

 事件に遭い、義兄弟が射殺されるのを目撃したソマリア難民の女性(44)は、「(当時の)映像が目に浮かぶし、頭の中でずっと銃声が鳴り続けている」と証言し、今もトラウマに苦しんでいることを明らかにした。別の被害者も、「フラッシュバックに襲われる。遺体に囲まれ、血の海にいる映像を見る」と語った。

 検察によるとタラント被告は、2017年にニュージーランドに移住し、クライストチャーチの南方360キロにあるダニーディン(Dunedin)に居を構えた。事件の2か月前にクライストチャーチを訪れ、ドローンを飛ばして標的の一つとなったヌール・モスク(Al Noor Mosque)の建物や出入り口を撮影。他のモスクへの移動に関しても詳細なメモを残していた。

 2019年3月15日、被告は高性能の武器を幾つも車に積み込んでクライストチャーチへ向かった。着用した迷彩服には装填(そうてん)済みの弾倉7つが装着され、「モスクを焼き尽くすつもりで」改造したガソリン容器も持参。ヘルメットには襲撃を記録するためのカメラが取り付けられていた。

 そして、74ページに及ぶ極右思想の「マニフェスト」をインターネット上に投稿した後、ヌール・モスクを襲撃。助けを求める被害者を容赦なく銃撃する様子を、ソーシャルメディアで中継した。父親の脚にしがみつく3歳児を見つけ、「正確に狙って2発」撃ち込む場面もあったという。

 被告は3つ目のモスク襲撃に車で向かう途中、警察に逮捕された。(c)AFP/Chris FOLEY