【8月23日 AFP】ベルギーで数人の空港警察官がスロバキア人男性の体を押さえつけ、暴行している現場を捉えた監視カメラの映像が公開された。これを受けてベルギー警察のナンバー2は20日、暫定的に職を退く意向を表明した。

 この映像は2018年2月にベルギーのシャルルロワ(Charleroi)にある空港で、搭乗の際に航空券の提示を拒否したとしてスロバキア人のヨゼフ・ホバネッツ(Jozef Chovanec)氏が機内から連行された際に撮影されたもので、AFPは内容を確認した。

 映像にはホバネッツ氏が連行先の留置場で、顔面から大量の血が流れるまで頭部を壁に打ちつけている様子が捉えられている。その後数人の警官が入ってきて、同氏に手錠をかけた。それでも同氏がおとなしくならなかったため、警官らは体を押さえつけ、1人は胸部に16分間座った。この間に中にいた女性警官1人は、踊るような動きやナチス式の敬礼をした。

 その後ホバネッツ氏は搬送先の病院で意識不明となり死亡した。表向きの死因は心臓発作とされた。

 遺族の弁護団によると、ホバネッツ氏の妻、ヘンリエッタ・ホバンツォバ(Henrieta Chovancova)さんは、この事件の捜査が2年も続いていることに不満を募らせ、弁護団の助言を受け入れずに映像を公開した。弁護団の一人は「依頼人がこの映像を世界に見せたいと望んだのは、捜査を信頼していないためだ」と説明し、「彼女は事件が真剣に受け止められていないと感じた」と付け加えた。

 ベルギーのピーター・デクレム(Pieter De Crem)内務・セキュリティー・対外貿易担当相の報道官は、この事件に関与した警官らの懲戒処分を発表し、ナチス式敬礼をした女性警官を事務職に異動させたことを明らかにした。また、この映像が報道で明るみに出るまで最上層部に一度も提示されなかった経緯も調査すると述べた。

 ホバネッツ氏の死は、米国で今年5月に黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)氏が警官に首の部分を膝で圧迫されて死亡した事件との類似性が指摘されている。映像はベルギーの日刊紙ヘット・ラーツテ・ニウス(Het Laatse Nieuws)が最初に伝えた。(c)AFP