太古の魚竜、命懸けた最後の食事 化石の胃に未消化の獲物
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【8月21日 AFP】2億3000万年以上前、イルカに似た大型海生爬虫(はちゅう)類イクチオサウルス(ichthyosaur)が最後の食事として自分とほぼ同じ大きさの獲物をむさぼったものの、その後間もなく死んでしまったとする論文が、学術誌「アイサイエンス(iScience)」に20日掲載された。
イクチオサウルスの腹の中にはトカゲのような海洋爬虫類タラトサウルス(thalattosaur)の頭部と尾を失った死骸が、未消化の状態の化石で見つかった。
2010年に中国南西部の採石場での発掘でこの化石を発見した古生物学者のチームは驚いた。海洋生物の化石の胃に食物が残っているというのはほぼ前代未聞のことだったからだ。
発見から10年が経過し、研究チームは論文で、体長5メートルのイクチオサウルスがイカのような自分よりもはるかに小さい頭足動物を食べていたのではなく、大きな獲物を捕らえる肉食動物だった可能性があると結論づけた。このイクチオサウルスは食べられる量以上の獲物を頬張り、体内に取り込む最中に死んだことが考えられるという。
米カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)の古脊椎動物学者で、論文の共同執筆者である藻谷亮介(Ryosuke Motani)氏は、「喉を損傷して呼吸ができなくなったことが死因だった可能性が最も高い」と述べた。
藻谷氏は、このイクチオサウルスがタラトサウルスと格闘しのみ込もうとした際に傷を負ったとみられると付け加えたが、「死んだ過程の解釈には想像が伴っている。現場で誰かがわれわれのために撮影してくれていたわけではないからだ」と注意を促した。
一方で研究チームは、イクチオサウルスに食べられた体長4メートルのタラトサウルスが自然に死んだあとに死骸が食べられたのではなく、暴力的な最期を遂げたということはかなり確かだとみている。
藻谷氏は、獲物には腐敗した痕跡がなかったと説明し、腐敗した死骸であれば指は残っていなかったはずだと指摘した。20メートル離れたところでタラトサウルスのちぎれた尾が見つかった。イクチオサウルスが引きちぎったのだろうと研究チームは考えている。
イクチオサウルスの体内に残っていた獲物は酸による消化が進んでいなかったことから、イクチオサウルスは最後の食事のあと間もなく死んだと考えられる。(c)AFP/Issam AHMED