【8月19日 東方新報】世界で電子ゴミが急増しているなか、世界最大の電子製品の生産地であり消費大国である中国は、電子ゴミの集散地として世界の7割を占めている。中国の業界では今、この電子ゴミを処理するかが問われている。というのも、処理の仕方次第で、環境破壊の毒となるか、宝の山となるか、変わってくるからだ。

 国連(UN)がこのほど発表した「2020年グローバル電子廃棄物監測」によれば、2019年の全世界の電子廃棄物は5360万トンに上り、わずか5年で21%増え、2030年にはこの数字は7400万トンになるだろう、という。中国工業情報部のデータによれば、中国で廃棄される電子製品の廃棄量は年間すでに2億台を超える。中国で廃棄するテレビ、冷蔵庫、スマートフォンなどは年間1100万トン以上。

 一方、2019年の世界の廃棄電子製品の収集・リサイクル率は17.4%にとどまっており、銀、銅、プラチナその他高価値のリサイクル可能な金属資源のほとんどが埋め立ててられたり、焼却されたりしているという。この未回収の金属資源の価値は570億ドル(約6兆円)相当に上る。

 重慶市(Chongqing)の長江上流域経済研究センターの莫遠明(Mo Yuanming)研究員は「過去、電子廃棄物リサイクル産業は、関連する法律や政策が欠如していたことで十分に重視されてこなかった。このため、電子廃棄物リサイクルの産業チェーンの形成が完成しておらず、資本の参入も阻害している」と指摘する。だが、昨今、中国でも、リサイクル産業の成長に伴い、電子製品の廃品の回収とリサイクルビジネスのプラットホーム形成が本格化してきた。

 ただ、電子廃棄物の解体業は巨大な利益をもたらす一方で、環境への高い対価も支払わねばならない。中国国内最大の電子廃棄物解体業集積地の広東省(Guangdong)汕頭市(Shantou)貴嶼鎮(Guiyu)を例にとれば毎年、日本や米国、韓国などからやってくる電子廃棄物100万トンを解体処理していることで、近くの河川の堆積物からはセレン濃度が土地汚染危険臨界値の10倍、スズは152倍、クロムは1300倍以上、鉛は200倍以上が検出され、極めて厳しい土壌汚染が進行している。

 中国再生資源回収利用協会の電子分会の唐愛軍(Tang Aijun)秘書長は、「目下、中国廃棄電気電子作業処理企業は200社以上ある。だが、正規の電子廃棄物処理企業は、正常な経営を維持することが難しい」という。

 理由は処理コストが高いこと。だから正規処理企業では、リサイクル電子製品の引き取り価格が低い。そこで、多くの人たちは、いらなくなった電子機器を、引き取り価格の高い中古市場(ふるいちば)に持っていくのだが、ここから最終的に無資格の廃品回収業にわたってしまう。これは市民のリサイクル意識の低さ、電子ゴミ解体企業への理解不足にも関係がある。

 目下、中国である程度の規模と経営能力を備えている先進技術設備のある、管理ルールのきちんとした正規のリサイクル処理企業は、中再生、格力、TCLといった大手企業に限られている。

 重慶市大足区(Dazu)の電子廃棄物の収集会社の「中天電子廃棄物処理」では、重慶市の都市部から集められた電子廃棄物の総合処理を行っている。2019年にこの企業の傘下にある三企業が回収した廃棄電子製品は約350万台に上った。

「分解後、産業別に分類して、リサイクル可能なものは関連企業に販売して再利用してもらう。危険廃棄物は有資格の企業に引き取ってもらう」と彭会剛(Peng Huigang)社長。この企業では、全プロセスに幹統合管理、7S管理を導入し、細分化した管理コントロールモデルを構築しているという。

 解体技術のレベルの上昇に伴い、電子廃棄物から貴金属や価値ある素材を取り出す技術も発展しており、電子廃棄物はまさにゴミから宝へ転換しつつある。ただ統一した基準や産業発展の秩序が欠落していることが問題なのだ。

 ここで重要なのは、電子ゴミリサイクル利用と無害化処理に関する専門的な法整備だ。

 先進国の「生産者責任拡張システム」の処理方法を参考に、中国としては電器・電子廃棄物基金制度を実施し、補助金を通じて生産企業がリサイクルに参加するよう奨励し、電子廃棄物処理企業を生産企業自身に建設してもらおうとしている。ただ、今のところは、補助金対象は主にテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、コンピューターなど一部に限られている。

 格力電気(Gree Electric)の董明珠(Dong Mingzhu)会長は今年の全国両会(全人代と全国政協会議)の場で、電子製品について生産企業のトレーサビリティシステムの構築を提案、これにより廃棄電子製品の中古市場への流入を防ぐよう求めた。同時に、政府に基金による補助制度を調整し、補助対象を拡大して、リサイクル処理企業により多くの支援政策を行うように訴えた。

 今、インターネットを使った分類回収など、電子機器の核心的なリサイクルモデルが続々と登場しているところで、こうした動きと政策がかみ合っていけば、2030年までに、中国の固形ゴミの分類資源利用の生産値規模は7兆元(約107兆円)から8兆元(約123兆円)に上り、かつ4000万から5000万の雇用をうむ、重要な産業になることが期待されている。 (c)東方新報/AFPBB News