【8月20日 AFP】香港国家安全維持法(国安法)の施行とそれを受けたドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領による香港に対する優遇措置の廃止により、香港の競争力が低下している。これらのリスクから香港は、金融ハブから中国の単なる一都市に変貌するとアナリストらは警告している。

 高度な自治を有した香港はかつて、アジアにおける予測可能なオアシスとたたえられた。だがこの1年で香港は危機にひんし、信頼のおける国際ビジネスの中心地という立場が脅かされている。

 2019年末に香港は、米国と中国の緊張関係と何か月にもおよぶ時には暴力行為も発生する大規模な抗議活動による悪循環から、既に景気が大きく後退していた。これによる動揺の影響を受けた企業の景況感は、回復していない。

 中国政府は6月末、独裁的支配に対する抗議活動を終わらせる目的で、香港の形勢を一変させる国安法を制定した。

 これを受け、トランプ氏は先月14日、香港に対する貿易上の優遇措置を廃止すると発表。さらに、反政府派への弾圧に関わった中国と香港当局者には制裁を科せる法律案にも署名した。

 アナリストや多国籍企業は貿易上の優遇措置の廃止は予想していたが、大統領令の適用範囲の広さに驚いた。

 英ロンドン大学(University of London)東洋アフリカ研究学院(SOAS)で中国研究院の代表を務めるスティーブ・ツァン(Steve Tsang)教授はAFPの取材に対し、「私が期待していたよりもはるかに適用範囲が広い」「香港は中国本土と同程度の困難が待ち構えているようだ」と語った。

 中国当局者に制裁を科す香港自治法は、超党派で可決した。これまで分断されていた米国内の政治が、香港での抗議活動に対する中国政府の対応を受け、一つになったことが表れている。

 トランプ氏は記者会見で、「今後は香港を中国本土と同様に扱う。特別な恩恵はなし、特別な経済上の扱いもなし、取り扱いに注意を要する技術の輸出もなしだ」と述べている。

 香港の自治侵害に関与したとみられる中国当局者らと取引のある金融機関は、取引停止を求められるが、1年の猶予期間が設けられた。