世界中で嫌われるコウモリは誤解だらけ、仏博物館で啓発活動
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【9月15日 AFP】フランス中部の博物館では、研究者らが親のいない赤ちゃんコウモリに昆虫や子猫用ミルクを優しく与えている。コウモリは、ヒトの疾患、ごく最近の例では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすとして、多くの人に嫌悪されている生き物だ。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、インドやペルー、キューバ、ルワンダの自治体はコウモリ駆除に乗り出したが、フランス中部ブールジュ(Bourges)に位置する自然史博物館の研究チームは、世の中で誤解されている、翼を持つ哺乳類の保護を使命としている。
コウモリは花粉媒介種として重要な存在で、作物の害虫もたくさん食べてくれるが、一方で、病気を拡散するとして非難され、一般的に大衆文化では血を吸う寄生生物として描かれる。
「病気がうつると恐れられている」と、博物館の館長でコウモリの研究と保護に長年携わるローラン・アルテュール(Laurent Arthur)氏は述べた。
「しかし、ふんの堆積物(グアノ)は新型コロナウイルスを伝染しない」とアルテュール氏は強調する。
今日までに世界で90万人以上が亡くなっている新型コロナウイルスは、科学者らの考えでは、コウモリに由来し、中国の食肉市場で売られている、おそらくはセンザンコウのような動物を媒介してヒトに感染したとされる。コウモリは、先ごろアフリカで発生したエボラ出血熱の起源とも考えられている。
世界で1200種以上いるコウモリは独特の免疫システムで病原体に対抗していると思われ、自らは病気にならずに病原体を媒介する、と現役を引退した疫学者で、現在は博物館で働くフランソワ・ムトゥ(Francois Moutou)氏は指摘する。
「飛行する唯一の哺乳類として、コウモリは胸筋に供給するために大量の酸素を消費する」として、高濃度の酸素はDNAを傷つける可能性があるため、コウモリは免疫反応を高める遺伝子修復能力を進化させたと説明した。