【8月15日 AFP】シリア北東部の村で、アブドルカリム・マタル(Abdulkarim Matar)さん(48)は家畜の馬の死を見守った。近くの石油施設からの原油流出で、資源豊かな村の川が汚染されたのだ。

 マタルさんによると、冬に発生した複数の洪水で近くの貯蔵施設から廃油が漏れ出し、マタルさんの所有地を汚染。所有地内を流れる川も油で汚染され、その水を飲んだアラビア馬2頭が死んだという。

 シリアでは内戦が始まった2011年以来、石油汚染の懸念が高まっている。内戦が石油インフラに打撃を与え、主要な油田の管理をめぐりライバル勢力間で競争が起きている。

 オランダのNGO「パクス(PAX)」によると、特に懸念されているのが同国北東部ハサカ(Hasakeh)県ルメイラン(Rmeilan)の大規模な貯蔵施設だという。北東部はクルド人が支配している地域だ。

 ルメイランの油田近くには米空軍が駐留。この油田は内戦初期にシリア政権軍が撤退して以来、クルド人にとって貴重な資産の一つとなっている。クルド人自治区当局は米軍の助けを借り、需要のある油田を数か所管理している。主な収入源を油田に頼っているのだ。

 パクスと石油情報サイト「TankerTrackers.com」の共同創設者サミル・マダニ(Samir Madani)氏によると、過去5年間に大量の原油が同地域の川に漏れ出し、数十の村々の住人の健康と生活を脅かしているという。

 マタルさんは、自分の土地を流れる汚染された川が「われわれの地下水を汚染し、絶えず臭いを発している」と語り、「皮膚感染症などの病気の温床でもある」と懸念を示している。(c)AFP/Delil Souleima