【5月22日 AFP】赤十字国際委員会(ICRC)は21日、シリア北東部において断水や食料不足、医療サービスの逼迫(ひっぱく)した状況が、新型コロナウイルスに匹敵するほどの脅威となっており、危機的状況がさらに悪化していると警告した。

 クルド人が支配するシリア北東部は、9年にわたる内戦で壊滅的な被害を受けた。無秩序に広がる避難民キャンプには、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員の家族を含め数万人が身を寄せている。

 ICRCは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、同地域における数々の問題にまた一つ新たな問題が加わったと指摘している。国連(UN)によると同地域では6人が新型ウイルスに感染し、1人が死亡している。

 ICRCのハサカ(Hasakeh)事務所のカリム・マフムード(Karim Mahmoud)所長は、「シリア北東部の数百万人は、戦闘の影響や水、食料・医薬品不足、電力不足、失業と物価上昇による経済悪化について、新型ウイルスと同じくらい不安に思っている」と話した。

 ICRCの地域責任者であるファブリツィオ・カルボーニ(Fabrizio Carboni)氏は、COVID-19のパンデミック(世界的な大流行)に「世界の関心が向けられているうちに、目の前に隠された深刻な危機がさらに悪化する危険がある」と語った。

 国連安全保障理事会(UN Security Council)は今年1月、ロシアからの圧力を受け、シリア北部への人道支援物資の輸送が認められていた国境検問所の数を4か所からトルコとの国境に位置している2か所に減らした。

 これにより、国連が支援する医療支援物資を主にシリア北東部へ輸送するために使用されていたイラク国境に位置するヤルビヤ(Yarubiya)検問所は廃止され、支援物資が不足している。

 ICRCによると、16か所ある病院のうち完全に機能しているのは1か所のみで、8か所は一部のみ利用可能、残る7か所はまったく機能しなくなっている。

 世界食糧計画(WFP)によると、シリア北東部の住民の半数以上が、食料不足に陥っていると考えられている。(c)AFP