【8月5日 AFP】認知症の症例の最大40%は予防したり進行を遅らせたりすることが可能だとする研究報告が先週、発表された。過度の飲酒から大気汚染までの危険因子に対して緊急に対策を講じる必要性を研究は訴えている。

 世界の認知症患者の数は今後、現在の5000万人から2050年までに1億5000万人に急増することが予想されている。

 だが、英医学誌ランセット(The Lancet)の委員会を構成する専門家らは、多種多様な国際的研究の分析に基づく最新の研究論文の中で、一連の政策措置を講じることによって症例を劇的に減少させたり症状の進行を劇的に遅らせたりすることが可能だと主張している。

 論文によると、小児期の不十分な教育、中年期の難聴、老齢期の喫煙はそれぞれ、認知症症例の7%、8%、5%原因となっているという。

 この他、今回の研究では新たに3つの危険因子が特定された。頭部の外傷、中年期の過剰な飲酒、高齢期の大気汚染への暴露で、これらを合わせると症例全体の6%に関連しているとされた。

 論文の筆頭執筆者で、英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London)のギル・リビングストン(Gill Livingston)氏は「かなりの割合の認知症を予防したり進行を遅らせたりすることは、政策立案者と個人の力が及ぶ範囲内にあることを、今回の研究報告は示している」と述べた。

 推奨される対策としては、健康的なライフスタイル、リスクを伴う職業での頭部外傷の予防や汚染に対処する政策、補聴器の提供などの取り組みなどが挙げられた。

■危険因子

 認知症は、アルツハイマー病や脳卒中などの病気で脳が損傷を受けることで発症し、患者の記憶や心的状態、日常的な作業を行う能力などに影響を与える恐れがある。

 認知症患者の約3分の2が現在、低・中所得国で暮らしており、これらの国々と富裕国内の貧困地域で危険因子に対処することで最も大きな効果がもたらされると考えられると、論文の執筆者らは指摘している。

 英エディンバラ大学(University of Edinburgh)の英国認知症研究所(UK DRI)のタラ・スパイアーズジョーンズ(Tara Spires-Jones)氏は今回の研究について、人々が自身の認知症リスクを減らすために講じることができる重要で実践的措置を提供しているとコメントした。

 一方、認知症症例の60%については、「現在分かっている限りでは、遺伝子などの人々が制御できない物事に起因するため、この研究報告によって、認知症の発症は自らの『責任』だとの考えにつながることは避けたい」とも指摘している。(c)AFP/Kelly MACNAMARA