【8月9日 AFP】サッカーのヘディングが脳に与えるダメージの議論が続く中、スポーツにおける脳損傷研究の第一人者が、18歳以下の少年少女のヘディングを禁止すべきだと述べ、話し合いにさらなる一石を投じている。

 若年層のヘディング禁止を提言したのは、アメリカンフットボールの選手と慢性外傷性脳症(CTE)の関係性を初めて明らかにしたベネット・オマル(Bennett Omalu)医師。医師は英BBCに対し、意見が反発に遭うのは覚悟の上だが、社会は進んでいくべきだと話した。

「18歳以下の若者にサッカーのヘディングをさせるべきではない。12歳から14歳には接触の少ないサッカーが必要で、そうしたタイプのサッカーを考案する必要がある。12歳から18歳の間は、プレー自体はともかくヘディングは禁止すべきだ」

「多くの人が反感を覚えるだろうが、科学は進歩している。人は時とともに変わっていき、社会も変化する。今こそ、これまでの常識のいくつかを変えるべきときだ」

 ナイジェリア生まれで米国に帰化したオマル医師は、米ナショナルフットボール(NFL)のピッツバーグ・スティーラーズ(Pittsburgh Steelers)でプレーしたマイク・ウェブスター(Mike Webster)氏の脳の検視解剖を2002年に行い、そこからCTEがNFL選手に与える影響を明らかにしていった。

 オマル医師は、ヘディング対策はプロでも必要だと考えており、「高速で移動する物体を頭部でコントロールしようとするのはナンセンス。ゆえに、プロのレベルでもヘディングは制限すべきだと確信している。危険だ」と話している。

 英国では、元プロサッカー選手のジェフ・アストル(Jeff Astle)氏が2000年代初頭にこの世を去った際、昔の重い革のボールをヘディングし続けたことによる脳損傷が死因だと結論づけられ、ヘディングの副作用が注目されるようになった。ウェストブロムウィッチ・アルビオン(West Bromwich AlbionWBA)などで16年間のプロ生活を送り、代表に選出されたこともあったアストル氏は、10年近く認知症に苦しんでいた。

 今年初めには別の元プロ選手の脳を家族が専門家に提供し、こちらもヘディングと関連した認知症の一種を患っていたと診断された。1966年のW杯(World Cup)イングランド大会を制した元同国代表のマーティン・ピータース(Martin Peters)氏、ノビー・スタイルズ(Nobby Stiles)氏、故レイ・ウィルソン(Ray Wilson)氏ら、認知症と診断されている元有名選手は他にもいる。

 オマル医師は「人の脳は頭蓋骨の中に浮かぶ風船のようなもので、ヘディングは脳損傷につながる」と話している。「ボールを頭でたたくのは、脳を痛めつけているのと同じ。サッカーのプレー経験は脳損傷のリスクを高め、影響は年を取って認知症やCTEの傾向が出始めたときに表れる」 (c)AFP