■「ジャンヌ・ダルク」

 夫のチハノフスキー氏は、大規模な混乱を画策しロシアの傭兵(ようへい)と共謀したとの嫌疑をかけられ、身柄を拘束された。こうした筋書きで夫の自由が奪われてしまったことについて、チハノフスカヤ氏は「とても恐ろしい」とコメントしている。

 選挙戦への出馬に際し、5歳の娘と10歳の息子は身の安全を確保するために国外に連れ出された。

 チハノフスカヤ氏はもし大統領に選出されたら、拘束されている夫と他の反対派を解放した後、もう一度選挙を行うと明言している。

 こうしたチハノフスカヤ氏の動きに一部の有権者は冷ややかな視線を送るが、その一方で彼女の存在を歴史的英雄になぞらえる声も聞こえてくる。

 首都ミンスクを拠点とする報道サイト「ビレッジ(The Village)」は、チハノフスカヤ氏を「予想外のジャンヌ・ダルク(Joan of Arc)」と表現した。

 当初は控えめだった態度も、最近の演説では称賛を勝ち取るほど堂々としたものに変化している。国営テレビの生放送では、割り当てられた時間を使ってルカシェンコ政権による数々の不正疑惑に言及し「これはテレビでは報道されない事案」だと繰り返し訴えた。

 そして、支持者が大勢集まる集会では、チハノフスカヤ氏のシンプルでストレートな演説に鳴りやまない拍手が起きる。

「みなさん、我慢することにうんざりしていませんか、沈黙を続けることに飽き飽きしていませんか」と支持者らに問いかけると、支持者らは「イエス」と大声で応えた。

 しかし、チハノフスカヤ氏は自分には夫チハノフスキー氏のような「大きなカリスマ性」はないと語る。国内各所を回って一般市民から直接話を聞き、人々の辛辣(しんらつ)な声を拾い集めて映像にまとめるチハノフスキー氏の活動は多くから支持を得ていた。

 他方で、さまざまな政治的見解が求められる場所での対応はあまり得意とはしていないようだ。ロシアが併合したクリミア(Crimea)半島の問題について質問された際には、それはウクライナだが事実上のロシアであるとだけ述べ、「これ以上私を苦しめないで」とそれ以上の発言を避けた。