【7月29日 AFP】北米の主要農作物の生産において、野生のミツバチが花粉媒介者として約15億ドル(約1580億円)相当の価値をもたらしており、野生のミツバチ減少が経済的に重要な農業の生産性を脅かすと警告する論文が、英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された。

 米農務省が出資したこの研究は、世界中で昆虫の個体数が急減することにより、作物の受粉や自然の食物連鎖に悲惨な結果をもたらす恐れがあることを証明している。

 米国とカナダの大学の研究者らは、野生のミツバチや飼育されているミツバチに受粉を依存する主要な7種の果物、野菜、木の実を調査。飼育されているミツバチも花粉交配用に、農場を転々と移動させられることが多い。

 以前から米国では、ミツバチが最も経済価値の高い花粉媒介者とみなされてきたが、中でも野生のミツバチが「集約的農業地域においても」、これまでの認識よりもはるかに大きな役目を果たしていることが今回の研究で判明した。

 論文の著者らは「調査対象作物の多くで、花粉媒介者の減少が収穫量や生産高の減少に直結する恐れがあることが示された。また主要な農作物生産地域で、調査対象作物の大半の受粉に野生のミツバチが貢献していることも明らかになった」と説明した。

 論文はまた、農業企業が野生のミツバチの減少問題に取り組まずに殺虫剤や肥料に投資しても、利益はほとんど得られないと結論付けている。

 昨年発表された画期的な研究によると、世界の全昆虫種のうち半数近くが減少傾向にあり、3分の1は今世紀末までに絶滅する可能性がある。またハチ6種のうち1種は、すでに局地的に絶滅している。絶滅の主な原因は生息地の減少や殺虫剤の使用だとみられている。(c)AFP