【7月28日 東方新報】中国の火星探査機「天問1号(Tianwen-1)」を搭載した長征5号ロケットが23日、海南省(Hainan)の文昌(Wenchang)衛星発射場から打ち上げられ、中国初の火星探査ミッションがスタートした。中国は年内に月探査機「嫦娥5号(Chang'e-5)」を打ち上げ、2022年ごろには独自の宇宙ステーションを建設する計画。宇宙開発で先を進む米国に対抗し、「宇宙強国」の実現に向けてまい進している。

「天問」の名は、中国古代の詩人・屈原(Qu Yuan)が「太古の始まりを誰が言い伝えたのか。天地がまだ作られていないのに、何によってそれを考えたのか」と宇宙誕生伝説への疑問をつづった詩が由来だ。宇宙の誕生を解き明かそうとする中国の意欲がネーミングに感じられる。

 天問1号は火星軌道の周回機、着陸機、探査車で構成されている。来年2月に火星の軌道に投入し、火星を数か月周回した後、火星最大の盆地「ユートピア平原」に着陸する予定だ。来年は中国共産党創立100年にあたり、火星着陸はそれを祝うビッグイベントとなる。今回の打ち上げは火星が地球に近づくタイミングで行われ、米国も近く打ち上げ予定。火星を舞台にした米中の争いが続く。

 今年10月に発射予定の嫦娥5号は月面到着後、ロボットアームで土壌を収集し、さらに穴を掘って深層土壌も採取して両者を比較する。サンプルを搭載した離陸機は宇宙船とドッキングし、土壌を移し替えて帰路へ向かう。この月面上陸、土壌採取、ドッキングはすべて世界で初めて人工知能(AI)の判断で行うというから驚く。

「嫦娥」は中国の伝説で月に渡った仙女の名前だ。中国は2007年に嫦娥1号を打ち上げ、月軌道に到達した5番目の国となった。2013年には嫦娥3号で月面に軟着陸し、着陸に成功した3番目の国となった。そして2019年、嫦娥4号が世界で初めて月の裏側への着陸に成功した。今回の嫦娥5号に続き、今後は月の南極(なんきょく)を調査する嫦娥6号、7号の計画も進んでおり、現代の「仙女」は忙しく月と地球を往来していく。

 そして中国は2022年末に、地球を回る独自の宇宙ステーションを完成させる計画だ。今年5月には、建設に用いる運搬ロケットとして長征5号(Long March 5)Bの打ち上げに成功したばかりだ。今後は11回の打ち上げを行って居住棟や実験棟を軌道上へ運び、有人宇宙船「神舟(Shenzhou)」と無人貨物宇宙船「天舟(Tianzhou)」を打ち上げて組み立てを進める。

 現在、米国や日本、欧州各国、ロシアなどが参加している国際宇宙ステーション(ISS)は、2014年までの運営が決まっているが、その後は不透明。日本も実験棟「きぼう」で薬剤開発や加齢研究をしているが、2024年以降はISSの運営を民間に移行し、商業利用を促進するともいわれている。

 中国は国際連合宇宙空間平和利用委員会の一員で、国連の宇宙関連の条約・協定に全て署名している。独自開発路線を進む中国だが、今後は他国から支援を求められれば手を差し伸べることも考えられ、宇宙空間における存在感はますます高まっていくと予想される。(c)東方新報/AFPBB News