【7月25日 AFP】イランからオーストラリアへの亡命を希望し、劣悪な環境の収容施設での生活を余儀なくされていた際に、携帯電話を使って執筆した作品で文学賞を受賞したクルド難民の男性に、ニュージーランドへの亡命が認められた。当局が23日、明らかにした。

 ベフルーズ・ブチャニ(Behrouz Boochani)氏は昨年11月、オーストラリアの強硬な移民政策下で強いられた6年間の収容所生活について語るため、ニュージーランドの文学祭に出席。その後ニュージーランドで難民申請を行い、以来同国に滞在している。

 ニュージーランド移民局は、ブチャニ氏の亡命申請が認められたと明かした。これにより同氏は、同国に無期限滞在する権利を得た。同移民局によれば、今回の決定は、同氏が37歳の誕生日を迎えた23日に、本人に伝えられたという。 

 ブチャニ氏は2013年、記事を寄稿していたクルド系雑誌社が、反政府的な記事を掲載したとして軍の捜索を受けた際、イランを離れてインドネシアへ渡った。その後、密入国業者に金銭を支払ってオーストラリアを目指したものの、豪領海内でボートが転覆。救助された後、海路で到着した移住希望者には領土を踏ませないという豪政府の政策の下、パプアニューギニアに設けられた施設に収容されていた。

 その間に、メッセージアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」を使って「No Friend But the Mountains: Writing from Manus Prison(仮訳:山だけが友──マヌス収容所から)」を執筆。

 自身の苦境を描いたこの作品は、オーストラリアで最も権威ある文学賞であるビクトリア州首相文学賞(Victorian Premier's Literary Award)など数々の賞を受賞した。

 ブチャニ氏は現在、ニュージーランド南島(South Island)のクライストチャーチ(Christchurch)にあるカンタベリー大学(Canterbury University)で、研究員として働いている。安堵(あんど)した同氏は、自身を迎え入れてくれたニュージーランドで、難民の人権擁護活動を続けていくと誓った。(c)AFP