■「大地にキス」したい気分

 フィリピン人技師のチェロキー・カパジョ(Cherokee Capajo)さん(31)はウイルスによる封鎖のため、ほぼ4か月、船内に足止めされた。

 カパジョさんがコロナのことを耳にしたのは、1月後半に米フロリダ州でクルーズ船運航最大手カーニバル(Carnival)が所有する豪華クルーズ船「カーニバル・エクスタシー(Carnival Ecstasy)」に乗船した時だった。

 じきに、日本での「ダイヤモンド・プリンセス(Diamond Princess)」を含め、同社のクルーズ船数隻が、深刻なコロナ感染に見舞われた。

「カーニバル・エクスタシー」の乗客らが3月14日に米フロリダ州ジャクソンビル(Jacksonville)で下船した後、カパジョさんと同僚らはさらに7週間、船内に足止めされた。

 同船は5月2日、バハマに到着。そこでカパジョさんを含めた船員1200人は別の船に移り、インドネシアのジャカルタに連れて行かれた。その後、6月29日にフィリピンのマニラ湾(Manila Bay)に到着した。

 カパジョさんは約2週間後に隔離を終えて上陸した際、「大地にキス」をしたいぐらいの気分だったと語った。

 その後、フィリピン中部の出身地近くで2度目の隔離を終えたカパジョさんは、フェイスブックのメッセンジャーを通じてAFPに「船員として過ごしてきた中で、最もつらい経験だったかもしれない。なぜなら毎日、何が起きるか分からなかったから」と語った。