【7月22日 東方新報】中国のチベット自治区(Tibet Autonomous Region)と言うと、広い草原でチベット族の農牧民がヤクや羊などの家畜を放牧しているという、のどかなイメージが浮かぶが、自治区ではいま農牧民の転職に力を入れている。環境保護と生活改善が狙いで、チベット族の生活様式も大きく変わろうとしている。

「今年は10万人の農牧民に職業訓練の機会を与え、全体で60万人の転職を実行し、1人1人の収入を20%増やしたい」

 チベット自治区のシザラ主席はそう目標を語っている。

 昨年は57.1万人の転職を実現し、総収入は34.8億元(約533億円)に達した。今年は上半期だけで年間目標の76.8%にあたる46.1万人が転職を果たした。総収入も年間目標の85.0%に及ぶ37.5億元(約574億円)。チベット自治区の総人口330万人から見ると、非常にハイペースで農牧民の転職が進んでおり、1人当たりの収入も高くなっている。

 中国では人口の増加とともに農業の耕作エリアや林業の伐採エリア、牧畜業の活動範囲が広がり、耕地や草地が砂漠化したり傾斜地で土壌流出が起きたりといった環境破壊が深刻になっている。そこで政府は1990年代後半から、耕作や伐採をとりやめ自然に戻す「退耕還森」政策を各地で進めており、チベット自治区でも推進している。そして政策による農牧民の失業を防ぐため、積極的に転職を進めている。「手に職」をつけるための職業訓練や新たな就業や創業のための補助金支給などを行っている。

 転職の推進は同時に農牧民の生活改善につながっている。農牧民の伝統的な生活では火をおこすにも牛のふんを使い、住居は質素な作りだった。暮らしは天候に左右され、ヤクや羊が順調に生育しないと収入は激減するため、現金の蓄えも少なかった。定職に就くことは生活が安定するだけでなく収入増をもたらし、人生設計を考えるゆとりも生まれてくる。チベット族の人々は「のどかな暮らし」から「豊かな生活」に移り変わろうとしている。(c)東方新報/AFPBB News