【7月23日 AFP】フランスで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の厳格なロックダウン(都市封鎖)が導入される数時間前、トゥールーズ(Toulouse)で自転車に乗っていたサミュエル・シャレア(Samuel Challeat)氏の頭に、外出制限が都市の音環境に及ぼす影響とその測定方法についてのアイデアが浮かんだ。

 その日、仏トゥールーズ大学ジャン・ジョレス校(University of Toulouse-Jean Jaures)の地理学者であるシャレア氏は、外出制限期間中の都市騒音の「類のない変動」を測定するよう、世界中の科学者や研究者に呼び掛けた。

 それから48時間以内に調査プロジェクト「サイレントシティーズ」が立ち上げられ、現在は米国、インド、ブラジルなど40か国から350人以上が参加していると、シャレア氏はAFPのインタビューで語った。

 参加者は、周囲の音を10分ごとに1分間録音し、オープンソースのデータベースに記録データをアップロードする。プロジェクトはオープンソースで進められており、誰でも自由に記録データや音声ファイルにアクセスできる。

 世界保健機関(WHO)は騒音公害を、大気汚染に次いで2番目に人間にとって危険度の高い環境リスク要因としている。また欧州環境庁(EEA)によると、欧州人の5人に1人が健康に悪影響を及ぼす持続的な騒音公害にさらされているという。

 仏パリの自然史博物館(Natural History Museum)の生物音響学者ジェローム・シュウール(Jerome Sueur)氏は、外出制限は都市の騒音公害の基準値を定める絶好の自然実験となったと指摘する。「私たちがどれほど騒がしい環境にいるかが分かり、それを定量化することが可能になる」

 シュウール氏はサイレントシティーズの一環で、パリと自身が住む郊外の都市カシャン(Cachan)に音響測定機器を設置。6月中旬には、パリにある自然史博物館の中庭に設置された音響測定機器で8000回以上の録音が行われ、50ギガバイトのデータが収集されたという。