【7月21日 AFP】フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)で唯一の黒人ドライバーであるメルセデスAMG(Mercedes AMG)のルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)が、迷走するF1界の反人種差別運動を批判したことを受け、上層部は持続的な変化をもたらそうとしている最中だと強調した。

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 F1で通算6度の総合優勝を誇り、19日の第3戦ハンガリーGP(Hungarian Grand Prix 2020)を制して今季のドライバーズ選手権でトップに躍り出たハミルトンは、人種差別への抗議行動に関してF1界の姿勢が十分でなく、リーダーシップに欠け、もっとまとまりが必要だとして、今週中に改善を求めていくと語っていた。

 シーズン開幕戦のオーストリアGP(Austrian Grand Prix 2020)では国歌演奏前の膝つきはグリッド上で行われたが、今回のハンガリーGPではピットレーンのパルクフェルメに場所が変更され、その光景はテレビでも短時間しか放送されなかった。

 ハミルトンは、「We Race As One(一丸となってレースをする)」をスローガンに掲げたF1独自の運動が、シーズン前に立ち上げられて以来まったく進展していないと主張。ハンガリーGPのレース前に慌ただしく行われた抗議では、何人かの選手が膝をついた一方で、立ったままだったり、遅れて来たり姿を見せなかったりした選手もいたことから、F1のチェイス・キャリー(Chase Carey)最高経営責任者(CEO)と国際自動車連盟(FIA)のジャン・トッド(Jean Todt)会長にメールを送ると話していた。

「前進するには、F1に話をする必要がある」「もっとやり方を改善するべきだ。(ハンガリーGPでの抗議は)本当に慌ただしくて、マシンを降りて走って行ってさっさと膝をついていた。もっとどうにかしなければ」と訴えたハミルトンは、レース前の恒例となっている「膝つき」にまとまりがないことを指して、「明らかにサポートが足りていない」との認識を示した。

「多くのドライバーは、一度やれば次はやらなくていいと考えているようだ。まるでもう終わった問題であるかのようだ。リーダーシップに欠けている。上層部がリーダーシップを取る必要がある」

 ハミルトンの19日の発言を受けて、F1は同日夜間にコメント文を発表し、「人種差別をなくし、F1の多様性と包括性を高めることが明確な目標である」「われわれは昨年11月に多様性と包括性を追求する計画を立ち上げた。そして最近では追加プランとして、こうした問題に取り組むための作業部会や基金を設立し、すでに100万ドル(約1億1000万円)を超える額を寄付して育成制度や活躍の場がないドライバーたちの雇用機会をつくり出している」と述べた。

「われわれは持続的な変化をもたらすことを望んでおり、現在それを実行しているところだ」

 基金についてはキャリーCEO個人が最初の100万ドルを提供しており、トッド会長もFIAとして100万ユーロ(約1億2000万円)を追加すると明言した。(c)AFP