【7月20日 AFP】新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)で損失を被ったホテルグループ5社に対し、保険金45万ユーロ(約5500万円)を支払うよう裁判所に命じられたフランスの保険会社が19日、控訴する方針を表明した。

 パリの商事裁判所は17日、ホテルの休業損失を保険会社が補償する契約になっているとのホテル側の主張を認め、保険会社アルバンジア(Albingia)に対し、2か月分の詳細な損失額が算出されるのを待つことなく暫定的に45万ユーロをホテル側に支払うよう命じる判決を下した。

 しかし、AFPの取材に書面で応じたアルバンジアは、裁判所による保険契約の解釈には同意できないと説明。問題の契約条項は、政府の命令でホテルが休業した場合については対象外だと主張した。

「ホテル業界が直面している大きな困難は、われわれも気に掛けているが、保険会社は経済危機の影響を吸収することはできない。それは契約の枠組みから外れている」とアルバンジアは述べている。

 一方、ホテルチェーン「HHP Hotels」を経営するステファン・フランベール(Stephane Flambert)氏は、「カフェやホテル、レストランの経営者にとって、店は職場であるだけでなく、相続財産だったり自宅だったりもする。保険会社は、こうした経営者たちが日常的に困難に見舞われている点を考慮するべきだ」と訴えた。

 これに先立ち、仏保険会社アクサ(AXA)は6月末、新型コロナウイルス流行とロックダウンによる損失額の「大部分」を補償することで、レストラン経営者数百人と和解したと発表している。アクサはパリのレストラン経営者との訴訟で敗訴し、休業損失の補償として約7万ユーロ(約860万円)の支払いを裁判所に命じられていた。

 世界最大の観光立国フランスでは、新型コロナウイルスから国民の命を守るため政府が導入したロックダウンにより、サービス業界がとりわけ深刻な打撃を受けている。フランス保険協会(FFA)は、新型コロナ関連の損失総額は約600億ユーロ(約7兆4000万円)に上ると試算しており、これは保険会社の補償能力をはるかに超えていると指摘している。(c)AFP