【5月1日 AFP】新型コロナウイルスによって失われた多数の命を悼みつつ経済の荒廃に身構えるイタリアで、虎視眈々(たんたん)と収束後の「一人勝ち」を狙っている者たちがいる──マフィアだ。

 伊マフィア対策庁(DIA)のジュセッペ・ゴベルナーレ(Giuseppe Governale)長官はAFPに対し、「イタリアマフィアは脅威を機会に変えることが可能だ」と語った。

 ゴベルナーレ氏によると、シチリア(Sicily)島の「コーザ・ノストラ(Cosa Nostra)」からカラブリア(Calabria)州の「ヌドランゲタ(Ndrangheta)」、ナポリ(Naples)の「カモッラ(Camorra)」まで、イタリア国内の犯罪組織は「(新型ウイルスによって)当初は守勢に回ったが、今はもう組織を立て直しつつある」という。

 英経済誌「エコノミスト(Economist)」の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」は3月末、新型ウイルス危機によりイタリアの2020年の国内総生産(GDP)は7%縮小するとの予測を発表した。イタリアの専門家によれば、倒産の危機に直面している国内の中小企業は約65%に上る。

 これは、ゆすりや高利貸しなどで不況にあえぐ事業者を食い物にするマフィアにとっては「おいしい」状況だ。

■あなたが欲しているものを「マフィアは知っている」

「マフィアのポートフォリオを見れば、彼らがこのパンデミック(世界的な大流行)でどれだけ金を稼げるかが分かる」と、マフィアの実態を描いた著作で知られる作家のロベルト・サビアーノ(Roberto Saviano)氏は言う。

「この数十年間、マフィアはどこに投資してきたか? 複合企業(食堂、清掃、消毒)、ごみリサイクル事業、交通機関、葬儀場、石油や食品の流通業だ。そうやって連中は稼いでいる」

 サビアーノ氏は伊日刊紙レプブリカ(Repubblica)とのインタビューで、「マフィアはあなたが何を持っていて、何を必要としているかを知っている。だから、それ(必要としているもの)を提供する。ただし、自分たちの条件の下で」と語った。

 DIAのゴベルナーレ長官は、マフィアが「すでに経済活動の復旧に備えて注意深く準備を進めている」と指摘。「マフィアは制度の抜け穴を探すだろう。不審な活動や会社の新設、ダミー会社に注意しなければならない」と述べた。

 感染拡大初期にイタリア各地の刑務所で、密集した環境での感染を恐れた受刑者らが早期釈放を求めて起こした暴動について、マフィアが裏で糸を引いていたとの見方を複数の犯罪専門家が示している。

「ヌドランゲタ」の捜査を率いるニコラ・グラッテーリ(Nicola Gratteri)検事は「非常に憂慮すべきことに、刑期の短い受刑者が複数、釈放を認められた」「実に危険な状況だ」と語った。 (c)AFP/Ella IDE and Ljubomir MILASIN