海を赤く染める伝統のクジラ漁、フェロー諸島で開始 保護団体は反発
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【7月19日 AFP】デンマークの自治領フェロー諸島(Faroe Islands)で、伝統のクジラの追い込み漁が始まり、約300頭のクジラが捕獲された。今年は新型コロナウイルスの流行と環境保護団体からの反発を受け、実施が危ぶまれていた。
1000年超も前に始まった「グリンダドロップ(グリンド)」と呼ばれる漁は、北大西洋に浮かぶ同諸島の文化の中核であり、鯨肉は主食にもなっている。
だが活動家らは長年、この慣習を非難してきた。スドゥロイ(Suduroy)島の南端に位置する村の沖合で15日、ヒレナガゴンドウ約250頭とタイセイヨウカマイルカ数頭が殺されると、反捕鯨活動で知られる海洋環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd)」からは再び抗議の声が上がった。
地元メディアによると、同団体は「野蛮な慣習」を終わらせるよう再び要求しているという。
そうした中、漁では漁師同士が接近するという問題をめぐり、ウイルス対策を担う地元当局は実施に懸念を示していたものの、フェロー諸島の漁業相が7日、大勢が密集するのを避けることを条件に許可した。
人口5万人足らずのフェロー諸島では、これまでに188人の新型ウイルス感染者が確認されているが、4月以降はわずか1人にとどまっている。
追い込み漁では、漁船でクジラやイルカを入り江に追い込んだ後、漁師が胸まで水に漬かりながらナイフで次々に殺し、海を血で真っ赤に染め上げる。
シー・シェパードは2014年の漁のシーズンには妨害して止めさせたものの、今回はデンマーク軍の軍用船がフェロー諸島の水域への進入を阻止することを認める法律によって阻まれていると非難している。
フェロー諸島ではこの慣習をめぐり意見が割れている。だが、多くの人々は、漁業を中心とする島の伝統文化を尊重するよう外国メディアや非政府組織(NGO)に求めている。(c)AFP